介護保険制度は政府の罠?

高齢者の要介護度を改善させると、成功報酬的に、事業者が受け取るお金が増えるようになるそうだ。

---------------------------------
★介護予防の報酬、要介護度の改善で加算・厚労省方針
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2005101108879h1
厚生労働省は11日、来年4月から導入する介護予防サービスで事業者が受け取る報酬体系の基本方針をまとめた。利用者の要介護度の改善度合いで評価し、最大で評価に2倍の差をつけて報酬に加算する「成功報酬」の導入が柱。利用者の負担も増えるが、質の高いサービスを提供する事業者を選びやすくなり、効果が上がらない事業者の淘汰も進む見通しだ。
---------------------------------

私の職場の老人ホームでも、寝たきりの状態で入居された方が歩けるようになったり、まったく発語のなかった方が、職員の毎日の話しかけによって、自分の生い立ちを話し出したり、歌い出したりしたことがあった。他の多くの方も、食事が良くなるせいか(栄養士が献立を考えていますからね)、健康的になっていくように見える。

しかし、やっぱり、人間は年齢には勝てない。だんだんと衰えていく。リハビリなどによって要介護度が改善したとしても、それは一時(いっとき)のことだろう。

介護保険が導入され、ビジネスチャンスとばかりにベンチャー企業が参入したりしたが、これから先は甘くないのではないかと私は考える。

政府は、今後ますます進んでいく少子高齢社会をにらんで、企業を介護ビジネスに参入させるために、わざと儲けの大きい・おいしいエサとして介護保険制度をつくったのではないか。そして、わんさか企業が参入し、容易に撤退できないくらいにまで初期投資をさせておいてから、事業者が受け取る報酬を少なくする・・・そういう罠に、政府は企業をはめたのではないかと私は疑う。

今月から、「特別養護老人ホームなど介護保険施設の居住費と食費(調理費)を給付対象から外し、原則自己負担とする改正介護保険法の一部が」施行された。事業者だけではなく、利用者の負担もますます大きくなっていくのかもしれない。

★改正介護保険法 きょう一部施行 利用者の負担増
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20051001&j=0045&k=200510012559

人口の減少に伴って税収も減る。にもかかわらず高齢者は増え、介護の手がますます必要となる。増税でもしない限り政府には金がないので(莫大な借金もある)、社会保障費を削らざるを得ない。考えれば当たり前のことだ。

私は毎日老人ホームでウンコと格闘している。汚い話だが、これが現実で、毎日高齢者の皆様のお尻を拭くのが私の仕事の一部である。この「お尻を拭く」という作業は、機械ではできない。鉄腕アトムくらい、高性能なロボットでもできれば別だが。

こうした介護の必要な高齢者の方々と接していると、人生の大先輩からいろいろと学ぶこともあるが、「こんな自分では動くこともできないような人達がこれからもどんどん増えていけば、これからの日本はどうなってしまうのか・・・」と思わず考えてしまう。

介護という仕事は、何かを生み出すような生産的な産業ではない。また、ある程度の効率化は図れるかもしれないが、それも限度があるし、介護を受ける高齢者の方に人間らしく生きていただくためには、効率だけを考えるわけにもいかない。しかし、そうした要介護老人が増えれば、少子化労働人口が減少していくにもかかわらず、介護をするための労働者がさらに必要になり、その分生産的な産業に従事する人達が減ることになる。

外国人労働者を入れないでこうした問題を解決するためには、少子化を改善するほかは手立てがない。

もっと子どもを産み育てたくなるような政策や制度などを、日本人全体で考える必要を私は感じる。