「無防備・平和都市条例」に、無防備ではいられない。~その8~多分最終回

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本日、高槻市議会に傍聴に行きました。結果から言いますと「高槻市無防備・平和都市条例案」は否決されました。

傍聴席から見えにくい席もあったので正確でないかもしれませんが、注目していた民主党系会派「市民連合議員団」の9人は全員反対。条例案に賛成したのは、「日本共産党高槻市会議員団」の4人(大川肇・勝原和久・中村玲子・橋本恵美子)、「高槻市政を革新する会」の2人(小西弘泰・森田充二)、社民党系の「元気市民」の2人(野々上愛・松川泰樹)、無所属の岡本嗣郎・二木洋子の計10人のようです(敬称略)。

・・・しかし、週刊新潮に対して、条例に反対すると答えていた「市民運動系の市議」って、誰だったんでしょう?「市民運動系の市議」は全員賛成してましたが・・・

本日の議事においては「質疑」(議案について議員が市側に質問すること)はなく、「委員長報告」→「討論」→「採決」という順でした。「討論」とは議案に対して反対や賛成の意見を述べること。今回は、橋本恵美子、野々上愛、森田充二、二木洋子の4人の議員が、いずれも条例案に賛成する旨の討論を行いました。

初めての傍聴だったので、どこから入るのか分からず迷ってしまいました。市役所旧館の東側に、傍聴席へ通ずる専用の入り口があり、警備員2名が傍聴券・傍聴に当たっての注意書き・審議日程・議事日程を配っていました。

手渡された注意書きには「議場における議事に対して、拍手その他の方法により公然と可否を表明しないこと」などと書かれていましたが、傍聴席の署名活動を進めてきた方たちは、拍手はするはヤジは飛ばすわで、議長に何度注意されてもまるで規則を守ろうとしませんでした。やはりこういう人達が運動を進めてきたのかと、ゲンナリ。

議員の席と傍聴席の間に、各マスコミの席があったのですが、報道関係者の姿は一切なし。予想以上に注目度が低かったようです。一応、高槻市では20年ぶりの直接請求なんですが(笑)。

議事の進行ですが、まず、12月21日に条例案を審査した総務消防委員会の久保隆夫委員長より「委員長報告」がありました。走り書きでメモしたので正確ではないかもしれませんが、報告内容としては、市側に問いただしたところ「平和への理念、憲法9条の理念は堅持する」「ジュネーブ条約追加第一議定書における『適当な当局』とは、やはり国であって、地方公共団体ではない。本誌において条例を制定すれば、地方自治法に背くおそれがある」「無防備宣言に必要な4条件の中には、市長の権限では遵守できないものもある」等の答弁。委員からは「平和のために制定すべき」等の意見もあったが、委員会では少数賛成で否決になった、と。

委員長が「遵守」を「そんしゅ」と読んでいたため、傍聴席からは「お前は漢字も読めないのか」「教養が低いやつだ」などの野次。

その次に本来なら質疑があるはずだったのですが、希望する議員がいないということで、質疑はなしに。大阪市議会でのような爆笑質疑があるかと期待していたのですが、拍子抜けでした(笑)。質疑したって笑われるだけだから、討論で一方的に意見を述べようという作戦だったのかもしれませんね。

次に4人の議員による討論。まず共産党の橋本恵美子議員が登壇。「憲法の理念に基づく条例案だ。日本で戦争へと向かう動きがある中で、多くの高槻市民が平和を希求した結果、この条例案が直接請求された。世界とアジアでは平和の流れが起きている。例えば北朝鮮の核開発問題については、六カ国協議が開催されているように、紛争の代わりに話し合いで解決しようとするのが国際情勢だ。世界でも日本の憲法9条が高く評価されている。条例案では9条の精神が謳われており、9条を守る取り組みとなる。高槻ではイラク自衛隊派兵反対意見書などを議会で可決させたが、こういったものを実効性あるものにするため条例案に賛成。条例案に多くの市民が署名したことも真摯に受け止めるべき」といった感じ(正確でないかもしれませんが。以下もメモ書きを基にしているので、詳しくは議事録などをご覧ください)

二番目に、社民党系会派「元気市民」の野々上愛議員。「1ヶ月で12518筆もの署名を集めた。市民の平和を求める声を高槻市は受け止めるべき。平和主義・国際協調の憲法があるのに、実際の日本の政治はそれから離れて行き、戦争へ、戦時下へ突き進んでいくという、違憲とも言える動きがある。市は市民の生命と財産を守る責任があり、市民が戦争に巻き込まれないことを示すためにこの条例は必要。市長は意見書の中で、他の条例などに基づき平和事業を行っているとしているが、不十分である。地方自治法に反するおそれがあるというが、赤十字国際委員会では正反対の見解が出されている。自治体が無防備都市宣言できるという他国の研究もある。この条例を武器として平和を守るべき」

三番目、森田充二議員「この条例案は非武装を謳った憲法の精神に合致している。小泉政権は戦争に向かっている。憲法第99条では『天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』とされている。その憲法を守る義務がある政府が、憲法を改正しようというのは憲法違反だ。GHQは、労働者階級とアジアの平和のためにこの平和憲法を作った。その憲法を変えようというのであれば、日本人民とアジア人民には、日本政府を打ち倒す権利がある。沖縄人民は、在日米軍のために、レイプ事件やヘリの墜落事故などで分かるように、生命財産を脅かされている。しかし、日本人民は平和的生存権を有している。そのことを本条例を制定することで確認すべきである。イラク人民にも平和的生存権があるが、米軍が劣化ウラン弾などの使用し、悲惨な状況となっている。こうしたイラク人民にも、石つぶてでもって米軍に反撃する権利があるのは当然ある。イラクに武装自衛隊が派遣されているが、海上輸送などで自衛隊が米軍を支えおり、つまりイラクの惨状は自衛隊にも責任がある。市長の答弁はそんな違憲行為をしている日本政府の答弁そのままであり、政府に屈している。法令に定められていない『調査管理規定』という単なる内規でこの条例の直接請求について妨害もした。軍事独占されているイラク人民のために何ができるか。それは在日米軍への戦いだ。沖縄人民のためにも沖縄の米軍基地をなくすのだ。沖縄人民との連帯が必要だ。イスラム人民のやむにやまれぬ抵抗運動・反撃する権利を認めなければならない。日本は朝鮮半島での戦争を想定しており、すでに戦時下へと進んでいる。民衆には、いかなることもする権利があるのだ」

・・・改憲違憲憲法第96条には憲法改正ができると定められていますが・・・「人民のやむにやまれぬ抵抗運動・反撃する権利を認めなければならない」のであれば、無防備地域宣言しても無駄じゃないですか(笑)。この森田議員の討論に一番しびれましたよ(笑)。

最後は、無所属の二木洋子議員。「12518名もの市民が憲法9条の地域での具現化を求めた。市民の意見を尊重すべき。平和的生存権や平和事業を条例として明文化したほうが、日本全国に、世界に、平和を発信できる。国防が国の専権事項などというのは政府の見解そのままである。無防備地域宣言は、一定の条件下では地方自治体でもできるので、高槻市独自の見解を出すべき。市民の財産を守るためにも高槻市は条例化すべきだ。ただ、平時にこのような宣言ができるかどうかは疑問で研究の余地がある。しかし戦時には宣言を行うという姿勢でいなければならない。憲法第9条が守られているならば、日本全国が無防備地域宣言をしているのと同じだ。何としても平和を守りたい、地域にできることはないかと市民が条例化を求めた。この条例は憲法第9条の地域での具現のために必要である」

その後挙手での採決があり、上述のとおりあっさり否決。議事開始からここまで40分ほど。意外に早く終わりました。採決直後「反対する意見はないのかー!ないなら何故賛成しないんだ!」「法治国家じゃないのかー」など傍聴席から野次。あまりのうるささに、議事の途中、議員席からは「議長、退場させろ」の声も。結局、最後まで誰も退場させられませんでしたが。

終わって緊張感が解けて、ぼんやりしていると、壇上で誰かがボソボソしゃべっている。「誰かが何かしゃべってはるわ」と思って良く見たら、市長が今年一年を振り返りつつ締めくくりの挨拶してました。その市長の存在感のなさが、なんだか妙におかしかったです(笑)。