子ども達が消えてゆく街・高槻市

子ども達が消えてゆく街・高槻市

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平成17年の国勢調査で、大阪府の人口は5年前の平成12年より11900人増加していることが分かった。高槻市を含む三島地域でも6478人増。しかし高槻市では5635人の減少。しかもこれは府下の市町村で2番目に大きな減少数だった。

平成17年国勢調査 大阪府の人口及び世帯数(速報)の結果公表について
http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/08556.html


市町村 人口総数(人) 増加数(人)
吹田市 353,853 +5,924
茨木市 267,976 +7,328
摂津市 84,997 -68
島本町 29,054 -1,071
高槻市 351,803 -5,635


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何故、高槻市の人口が、近隣の市町村に比べこれほど減少したのか。

その原因について、高槻市の統計課は、「子供の独立による転出など」と答えた(平成17年12月15日付読売新聞)。しかし、子どもの独立など、どの市町村でも起きていることである。他市の学卒者が、パラサイトシングルやニートばかりの訳がない。高槻市統計課の弁は、まったく答えになっていないのである。人口減少について、高槻市独自の原因・事情を述べられないなら、分析不足であるといわざるを得ないのではないか。それとも、本当の原因をわざと隠しているのか。

高槻市の鉄道事情はかなり良く、通勤・通学に便利だ。茨木市には停まらないJRの新快速、阪急電鉄通勤特急快速特急高槻市には停まる。後者に乗れば、地理的には大阪に近い茨木市民よりも早く大阪駅に着くことができる。道路事情も良くなってきた。

やはり、悪名高き高槻市の公教育のせいか。そう仮説を立てて、高槻市で情報公開を担当する市民情報課を通じ、統計課から各年ごとの年齢別人口の資料を取り寄せた。そして、高槻市で生まれた子ども達、あるいは高槻市に0歳の時に移り住んできた子ども達が、年を経るごとにどう増減するのかを調べてみた。

その結果が一番上の表である。上の欄は12月31日現在の年齢。平成元年を例にとると、平成元年に生まれた子ども達、正確に言えば平成元年12月31日に高槻で0歳を迎えた子ども達は、3610人。その子たちが7歳になり大半が小学1年生になったとき(1~3月生まれは小学校2年)、11.2%の減の3204人になっている。さらに中学校1~2年の13歳になったとき、0歳時と比べ、16.1%減の3028人までに人数が落ち込んでいる。

他の年代を見ても、1~2歳時に一時人口が増加するものの(子育てのために実家のある高槻に戻るのではないかと思われる)、小学校就学時(7歳)には5~12%減少し、中学校就学時(13歳)には11~16%も減少している。

子どもの死亡率は0.1%にも満たない。この高槻の子どもの減少率は、異常に高いと言える。

子ども達が高槻市から消え去ってゆくということは、その親達・労働力人口も去ってゆくということだ。少子化に加え、消えてゆく子ども達と労働力人口の流出。高齢化で年寄りだけが残っていく・・・平成12~17年の5年間での高槻市の人口減少率は1.58%だが、この「-1.58%」という数字以上に、根深い危機が高槻市では進行しているのではないか。

高槻市のサイトを見ると、「施政方針大綱」をはじめ、頻繁に「都市間競争」という言葉が出てくる。この「競争」によって何を勝ち取るのかと言えば、「意識の高い市民」であると思うのだが、しかしこうした人口減少、特に子ども達の流出による減少というのは、厳然とした都市間競争の敗者たる証拠ではないだろうか。

高槻市のサイトには掲載されていないが、平成13年1月に高槻市が総合計画を策定するにあたって、平成12年6月にまとめられた「高槻市総合計画策定関連資料」には、高槻市が平成10年に高槻から転出した世帯主500人に対して行ったアンケート調査の結果がある。「高槻市の課題は?」の問いに対して一番多かった答えは「道路交通の渋滞緩和」(53.2%)。そして2番目は、「子どもの教育環境の向上」(27.9%)であった。

孟母三遷の教え」ではないが、高槻市の公教育を嫌って、親が子どもの教育のために高槻から引っ越しているというのが、子ども達が消えていった大きな理由ではないのか。

高槻市長である奥本務氏は、京大農場や安満遺跡のある土地にサッカースタジアムを建設することを選挙公約として先の市長選挙で当選し、今もそれをあきらめていないようだが、そんな人気取りのための浮ついた公約よりも、高槻市の公教育のあり方を真剣に改革しなければ「都市間競争」には勝てないだろう。

高槻市に、天下の京都大学の実験農場がある」ということは、むしろ子ども達の学力向上のためのモチベーションアップに活かせるのではないか。京都大学を追い出すよりも、例えば京大農場で最先端のバイオ技術等を見学するなど、公立小中学校との連携を深めるほうが良いのではないか。

高槻の公教育の癌は、日教組などの教職員組合の思想に染まった教師だ。地元集中や結果平等主義の教育、教科書の内容を年度内の授業で終わらない怠慢、ジェンダーフリー教育、過激な性教育、偏向した歴史教育、そうしたものに対して高槻市は是正を求めなければならないのではないか。

職員組合の影響力を排除し、子ども達を守るために、高槻市独自の小中高一貫校を設立するというのはどうか。そうした教育改革のシンボル的な存在を作る方が、高槻市の姿勢を内外にアピールできる。ゆとり教育とは対極にあるような小中高一貫校を作り、非組合員の教員を独自に採用し、経済的に私立校へ行く余裕のない家庭の子ども達に門戸を開き、更なる学力向上の機会を与える。そのようにして、経済的な理由による教育格差をなくしていくべきだと考える。

国会では教育基本法の改正案が出てくる模様。

TBS「小泉首相『愛国心は自然な感情」」
http://news.tbs.co.jp/top_news/top_news3267483.html


 「愛国心というのは、どなたも持っていると思いますからね。愛国心は自然な感情じゃないでしょうかね」(小泉首相

 自民・公明の両党が合意した改正案では、愛国心の表現について「伝統と文化を尊重し、それらを育んできたわが国と郷土を愛する」となっており、野党からは、「権力の教育介入に道を開く」などと批判が出ています。

 与党側は、閣法として今の国会に改正案を提出するよう、政府に申し入れを行いました。

 ただ、自民党久間総務会長が「会期延長しても成立は困難」との認識を示すなど、成立するかどうかは不透明です。★


教育とは、国の根幹を成すもの。政治の介入が何故いけないのか。

成績にかかわらず出身中学校の近くの高校への進学を強いるやり方(地元集中)が「高槻方式」と呼ばれるなど、高槻市の公教育は全国的に悪名を馳せた。子ども達や保護者にとって本当に魅力的な公教育に改めるためには、近隣市町村も驚くような大胆な方策と、政治による教育現場への介入が必要だろう。