「2学期制」なのに「3つのステージ」とは?第3回推進委員会を傍聴して(前編)

20060908151818.jpg
先週の金曜日、高槻市役所で行われた今年度3度目の「2学期制推進委員会」を傍聴してきました。

来年度から2学期制が高槻市立のすべての小中学校で導入されるのですが、今回の推進委員会でも実質的にはほとんど議論はなく、単なる報告会のような感じでした。そんな「2学期制推進委員会」って、一体どんな意味があるのでしょうか。

私のような一般の傍聴者にとっては、モデル校でどのような取り組みがされているのか、担当の先生からの報告が聞けるのでありがたいですが、学力充実・生徒会や委員会活動・全校的な運動等は、前から指摘しているとおり、別に「2学期制」でなくてもできるものであり、むしろ「2学期制」が弊害になっているのでは、と疑問を感じるもの(定期テストの回数や通知表の減少・部活・無用な不安と混乱等)もあります。

3度目となった今回の推進委員会では、まず夏休み中の取組みの報告として、高槻市立第七中学校ブロック(七中・三箇牧小・柱本小)などの報告と、来年度実施に向けての課題整理が行われました。課題整理といっても、事務局が整理したものをただ承認するのみでしたが。

まず、第七中学校の報告ですが、パワーポイントを上手に使って、そつなく発表されました。

手渡された資料は写真のとおりなのですが、それを読んで少し疑問を覚えました。
osirase1.jpg

★本格的な2学期制が始まっています!

高槻市立第七中学校 校長 前田 勉

【保護者の皆様へ】

 本年4月より「二学期制」を全面実施しています。「なぜ二学期制なのか?」ということについては、説明会やお便りですでに繰り返し説明をしてきましたが、一言で言うと、現行の学習指導要領の枠では3つのより2つの区切り、すなわち二学期制の方が、教育内容・評価等において充実すると考えるからです。

 第七中では単に二学期制への移行にとどまらず、本校の課題解決のための学校改革に取り組んでいます。「授業の充実と信頼の充実」をキーワードに、きめ細やかでより丁寧な指導と評価を行っています。

 信頼の充実を中身あるものとするために、積極的な生徒指導の展開、生徒会の活性化、環境整備充実等に力を入れています。その結果、学校生活や様々な行事では、生徒一人一人に達成感や成就感が芽生えたのではないでしょうか。

 さて、本校では、前期・後期の二期制を基本として、3つのステージを設定しています。夏休みを前に、第1ステージが7月20日に終了します。学期の途中に長期の休みが入るため、本校ではステージ制を取り入れていますが、二学期制を生かした夏休みとするためにも、学習や学びを中断させないと言うことが大切になってきます。特に3年生は進路を控えこの夏休みの頑張りが大きく影響します。

 七中では、裏面の表のように夏休みに2週間の学習支援期間を設定しています。教室などの学校の施設を活用してこの夏休を主体的に乗り切ることが大切になってきます。

 規則正しい毎日の生活と家庭学習を定着させるために、各家庭でもよろしくご協力をお願いします。(原文のまま)★



「二学期制」なのに「3つのステージを設定」とは、これ如何に?その理由を、このお知らせでは「学期の途中に長期の休みが入るため、本校ではステージ制を取り入れています」としていますが、やはり学期の途中に長期の休業日が入って連続性が途絶えると、生徒の成長には何らかの弊害があるとお考えなのでしょうか。

その「3つのステージ」の第1ステージは、7月20日に終了し、第2ステージは8月29日にスタートするとされています。ということは、「3つのステージ」の正体は、旧「3学期制」なのでは?これは、2学期制を無理やり進めようとする教育委員会に対する、前田七中校長による密やかな「反抗」なのでしょうか?(笑)

2以上に細かくステージを分けるのは、2学期制によって1つの学期が長くなると、子ども達が「だれる」と感じられるからではないでしょうか。ステージ制を取り入れている他の学校を見てみると、1年を春夏秋冬の4つのステージに分けているところがありました。このように、季節の変わり目で気分を入れ替えたり、3学期制のように休みでリフレッシュして次の学期に臨んだりする方が自然だと思われます。「期間が半分終わったから」という区切り方はどことなく機械的で、人間の生理に合わない気がします。

発表では「学力の充実」という目標を掲げていましたが、七中では、2学期制導入に伴い、5回あった定期考査を、前期後期の各2回、計4回に減らしました。「夏休み前に通知表がない」「定期テストが減る」ことに保護者が不安を覚えると指摘しながらも、それを「生徒に自己評価をさせる」「家庭学習をきちっとさせる」「授業を改善する」「夏休みに学習支援週間(成績下位の生徒が対象・自主参加)を設ける」「地域・保護者との信頼関係の充実」「年に数回実力テストを実施する」ことで払拭したいとしていました。

私は、定期考査が減ることについては危惧を抱いています。定期考査が減る替わりに「実力テスト」なるものを行うとしても、多くの生徒は「内申に響かないし、今の実力でいいや」という気持ちで受けるのではないでしょうか。受験を意識して本番さながらの緊張感で受ける模試のようなものなら別ですが、そんな「実力テスト」よりは、単元が終わる毎に行う「確認小テスト」「復習テスト」等のほうが意味があると考えます。

そういった「実力テスト」よりも、「自分の内申書・進路・将来に影響するから、テスト対策の勉強を一生懸命やって実力を伸ばして、少しでも良い点を取ろう」と高いモチベーションで挑む定期考査の方が、生徒の学力を伸ばす上でも意味があると考えます。前にも書いたとおり、2学期制にするなら、むしろ定期考査を増やしたほうが良いと私は考えています。

学期制・ステージ性にしろ、定期考査にしろ、生徒に対しては、短期的な目標を達成させ、それを積み重ねていきながら、長期的な目標にたどり着かせる、という考え方で、教育委員会や校長先生・教師の皆さんには考えていただきたいです。

教師の皆さんが、大学受験や教員採用試験・昇進試験という難関を突破するためにはどうしてきたか。そういう視点で考えれば、自ずと答えは出てくると思います。無論そういった進学志望の生徒ばかりではないので、そこに対する計画・ケアも必要でしょうが。

しかし、どんな制度を採用し、学校改革をするにせよ、やはり学力の伸びを検証するために、統一試験の実施が必要ですね。後で効果を検証できない制度改革なんて意味がないのではないかと思います。

七中のお知らせには【生徒諸君へ】として、このような文章もありました。
osirase2.jpg

★二学期制を生かした夏休みとするために
夏休みはしっかり勉強しよう!
(中略)
 今年は前期の期末考査が9月にあります。今、できていないところ、わからないところはじっくり時間をかけて取り組むことができます。学校では毎日5~6時間勉強をしてきましたが、夏休み中は自分でいつ、どれくらい、何を勉強するのか決めなければ、何もしないままに夏休みが終わってしまいます。また、きっちりと計画通りにやった人とそうでない人では大きな差が出てきます。できるだけ毎日、その日の予定によって朝早く起きてやったり夜遅く試合から帰ってきてやったりと勉強する時間帯は日によって違っても、とにかく毎日、勉強するのが良いと思います。夏の終わりになってあわてることのないように、計画的に学習をしましょう

 学校でも、夏休みの初めと終わりの1週間ずつ、計2週間ですが、学習支援週間と位置づけてみんなの学習を支援します。★



私が生徒なら、「『夏休みはしっかり勉強しよう!』なんて、『夏休み』のはずが、全然休みとちゃうやんけ!」と思わず叫びそうですが、保護者としてなら、毎日勉強せよと呼びかけてくれるこのお知らせは大変ありがたいことでしょう(笑)。ただ、これも、2学期制でなくてもできるわけですが。

この文章で気になるのが2点。一つ目は「二学期制を生かした夏休みとするために」というタイトルです。二学期制は別に子どもや保護者が選び取ったものではありません。上からの都合で押し付けられたものです。上から押し付けられたものでも、何らかのメリットが子どもにあるならそれで構いませんが、2学期制でも3学期制でも、別段変わらないのに、それを「生かせ」なんていうのは、どういうことでしょうか?

二つ目は、期末考査が9月13~15日にあり、夏休みの前に習った内容がテストの範囲に含まれること。忘却曲線のことを考えれば、夏休み直前にテスト期間を設けた方が、学習内容が定着するのではないでしょうか。以前提案したように、前期後期とも定期考査を3回やり、前期は夏休み前に2回行って、3回目のテストを前期終了間際に設定するのが良いと私は考えます

「夜遅く試合から帰ってきてやったりと勉強する時間帯は日によって違っても」なんて平然と書いていますが、一日中クラブ活動をやってヘトヘトになって帰ってきあとに、勉強なんてできるでしょうか。夏休みなのに、9月の期末考査が気になって、気分転換ができず、変にストレスを抱え込んでいる子もいるのではないでしょうか。夏休みの期間を多少削っても、定期考査は夏休み前に終わらせてあげるほうが良いと思います。夏休みには、「夏休みの宿題」もありますしね。

七中では以前書いた「ジャスミン運動」に取り組んでいます。「ジャスミン運動」とは、J(授業)・A(挨拶)・S(掃除)・MI(身だしなみ)・N(ノーチャイム)の頭文字をとってJASMIN(ジャスミン)と、子ども達がネーミングしたそうです。保護者がPTAの会合でジャスミンティーを用意してくれたり、非常に親しまれ、浸透しているそうです。そういった運動については、私も評価しています。ただし、やっぱり2学期制とは関連がありませんが。

七中の次は、三箇牧小学校の先生が発表しました。この三箇牧小の先生は、前回の委員会で「緻密に良く考えているなあ」と私が評価した先生でもあります。しかし今回は今一つ歯切れが悪かったように思いました。三箇牧小では、児童と保護者に対するアンケートを実施したのですが、それがさほど芳しくなかったせいかもしれません。主なアンケート結果は以下のとおりです。正直なアンケートの数字を公表したことについては好感をもちました。

★夏休みの取り組みを終えてのアンケート

児童のみなさんへ

■サマースクールに参加して「良かったな」と思う取り組みは?(複数回答可)
 ・水泳・・・244人
 ・補充学習(弱点補強、夏休みの課題)・・・80人
 ・読書(図書館)・・・80人
 ・調べ学習(コンピュータ室、図書館)・・・96人
 ・もの作り実習(紙飛行機・ブーメラン・マジック、わりばし壁飾り)・・・130人

■サマースクールで7月中に学習を続けたり、8月下旬に学習することで学習の習慣がどう変わりましたか?
 ・夏休みの課題を計画的にやり終えた・・・90人
 ・今までよりは学ぶ習慣が続いた・・・74人
 ・今までと変わらなかった・・・126人

■8月29日~31日、3日間の午前中授業について
 ・もっと増やしてもいい・・・72人
 ・3日くらいでちょうどいい・・・106人
 ・へらしてほしい・・・111人

■個人懇談のあと、おうちの方から話の中身を聞きましたか
 ・聞いて話し合った・・・77人
 ・聞いた・・・148人
 ・聞かなかった・・・83人

保護者のみなさんへ

■サマースクールに参加した子どもさんの様子から、「良かったな」と思う取り組みは?(複数回答可)
 ・水泳・・・191人
 ・補充学習(弱点補強、夏休みの課題)・・・85人
 ・読書(図書館)・・・62人
 ・調べ学習(コンピュータ室、図書館)・・・60人
 ・もの作り実習(紙飛行機・ブーメラン・マジック、わりばし壁飾り)・・・85人


■サマースクールで7月中に学習を続けたり、8月下旬に学習することで学習の習慣がどう変わりましたか?
 ・夏休みの課題を計画的にやり終えた・・・74人
 ・今までよりは学ぶ習慣が続いた・・・27人
 ・今までと変わらなかった・・・106人

■8月29日~31日、3日間の午前中授業について
 ・もっと増やしてもいい・・・57人
 ・3日くらいでちょうどいい・・・153人
 ・へらしてほしい・・・22人

■7月個人懇談をおこなったことについて
 ・とてもよかった・・・95人
 ・よかった・・・109人
 ・よくなかった・・・6人★



サマースクールに対する評価の選択肢に「悪くなった」等のネガティブなものがないので、もしかすると悪くなったと思っている児童・保護者もいるかもしれませんが、「よかった」と「変わらなかった」を比べると、肯定的な評価がわずかながら上回っているように見えます。しかし、全員がもろ手を挙げて賛成、というわけではないので、もう少し原因を調べて考える必要があるのではないでしょうか。

個人懇談については、圧倒的多数の保護者が「良かった」と答えている点は、評価すべきだと思います。8月29日~31日の3日間の午前中授業については、減らしてほしいと思っている子どもの数111人に比べて、親のほうは22人。子どもに勉強してほしいと思っている親心を感じますね(笑)。


・・・少し長くなりましたので、後半は後日にしたいと思います。