「2学期制」は「ギター侍」風に斬れ!第3回推進委員会を傍聴して(後編)

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随分遅くなりましたが、2006年09月11日の記事「第3回推進委員会を傍聴して(前編)」の続きです。

これまで述べてきたことですが、2学期制推進委員会の中で議論されてきた、夏休みに設けられるサマースクールや授業日・補充授業、あるいは三者懇談や補助簿、学校を良くする運動といったものは、別に2学期制でなくても実施できるものです。

ですので、2学期制を考える場合、紅白歌合戦にも出場した「ギター侍」風に(そういえば、最近ギター侍を見かけませんが)、「でも、これって、2学期制と全然関係ないですから~!残念!」といった感じの視点で見ていくと、結局、終業式・始業式が1回ずつ減る分、授業日が(給食も)増えて、通知表が1回減る、くらいしかないのです。

それ以外の、以前「広報たかつき」に書かれていたような「確かな学力の定着」「継続的な指導」「豊かな心を育む充実した教育活動」「学校や地域の実態に応じた教育課程」などの効能は、単に2学期制にしても、実現しないということです。このような効能を謳いながら、是が非でも2学期制を実現させようとする背景には一体何があるのか。そのあたりは良く分からないのですが、市民を目眩まししながら進めようとされるものには、何か危険な臭いを感じます。

さて、高槻市教育委員会のサイトを見てみると、第3回目の2学期制推進委員会の会議要点録がアップされていました。これを見ていただくと、どのような話がされたかお分かりいただけると思います。

第3回高槻市学校園2学期制推進委員会会議要点録
http://www.city.takatsuki.osaka.jp/new2001/kyoiku/pdf/nigakkikaigiroku6.pdf


この会議要点録では分かりませんが、配られた資料によると、「学校裁量を原則とするもの」として、次の6つの項目が挙げられていました。

★学校裁量を原則とするもの

補助簿・補助資料
個人懇談
○家庭訪問
○学校行事の見直し
定期テストの回数
○週時程表(標準時数は確保する)



この中に夏休みに行われるサマースクールや授業日・補充学習などは含まれていませんが、どうやらそれらも教育委員会で決定するのではなく、学校の裁量に任されるようです。

つまり、この2学期制の導入によって、単に学期が一つ減るのではなく、このように「学校裁量」のものが増える。こちらの方がより重要ではないでしょうか。

前にも述べましたが、2学期制のモデル校である高槻市立第七中学校は定期テストの回数を5回から4回に減らしました。極端な話、定期テストが学校裁量となると、3回にも2回にも減らすことが可能になるわけです。逆に増やすことも出来ますが。

さらに、通知表が一回減る代わりに行われるとされている個人懇談・三者懇談と、そこで生徒の成績を示す補助簿・補助資料も学校裁量に。モデル校の中でも、補助簿を配布しない、作らないという学校もあり、2学期制実施後に、1回減った通知表の分の埋め合わせが全学校でされるのか非常に心配です。

2学期制を推進するにあたって、モデル校では、(2学期制とは無関係の)より良い取り組みを行い、無理にでもその結果を示そうとしているようですが、2学期制が高槻全域の小中学校で実施された場合、「学校裁量」によって、中には学習環境が劣化する学校も出てくるのではないでしょうか?

実際、以下のような議論がありました。

第3回高槻市学校園2学期制推進委員会会議要点録

(前略)

委員長:前回話し合われたことを整理していただいたようですが、ご意見はございますか。高槻は、教育委員会が決めるのではなく各学校にまかせるということのようですね。

委員⑬:このままでは、夏休みに授業日を多く取った学校が良くて、取らなかった学校が悪いというふうに思われるのではないでしょうか。そのあたりを教育委員会はどのようにお考えなのか、伺いたいです。

委員長:あなたはどのようにお考えですか。

委員⑬:保護者にとっては、授業日の多い学校が良いと映ると思います。

委員⑭:長期休業日に授業日をつくることは、それぞれの学校がこの授業日を何のために設定したのか説明できなければなりません。京都のように年間の授業日数を一律に205日と統一する方法もありますが、それでは長期休業日の日数もはじめから縮めることになります。

委員長:委員がおっしゃっているのは、一定の歯止めが必要だということだと思います。ただ、先ほどの報告にもあったように、2学期制で始業日と終業日が減った分の時間を授業研究へ使ったり、授業日を増やして、子どもの自主性を高め学ぶ意欲の向上に工夫できたりすることは高槻の先生方にとって魅力のあるものだと思います。授業日を増やすことを競争のようにやらないように、先生同士の統一は必要かもしれませんね。

委員⑮:今頃、授業日の日数で心配するような意見が出るとは思いませんでした。各学校が自分の学校の課題を話し合い、解決するために夏休みに授業日を設定し、その利用方法を追求してきたのです。

委員長:つまり、学校の取り組み次第ということですね。時間がきたようですがよろしいですか。それでは、事務局よりお願いします。

事務局より2学期制のシンポジウムを10月28日(土)に開催することと、第4回目の推進委員会を2月2日(金)に開催すること。並びに、先進地域の視察について呼びかけがあったことを確認しました。★



この委員⑬の方の本音は、「これ以上授業日を無制限に増やすな」ということでしょう。委員長も「授業日を増やすことを競争のようにやらないように、先生同士の統一は必要かもしれませんね」なんて答えています。

こういう意識で、たとえば教職員が団結して校長に迫るなどして圧力をかけた場合、2学期制推進委員会で話し合われた先進的な取り組みなどとは逆に、単に教師が楽を出来るような方向に進む可能性もあります。

「2学期制」という言葉に隠された「学校裁量」というキーワードに、我々は注意しなければならないのかもしれません。


さて、2学期制になると、学期は、前期が4月1日から10月第3月曜日の前日まで、後期が10月第3月曜日から3月31日までとなるようです。夏休み、冬休み、春休みは、3学期制の時と変わりません。

また、10月28日(土)午後2時から高槻市立桃園小学校体育館で、2学期制シンポジウムが開催されます。2学期制推進モデル校から2年間の成果報告がなされるとのこと。私も都合がつけば出席するつもりです。