【政務調査費】後退する使途基準

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今日は、先週の月曜に続いて、「高槻市議会政務調査費の交付に関する条例」や関連規則の見直しに向けての検討会(議会活動検討会)があります。この会には、会派からの代表者しか出席できないので、会派に属していない私は傍聴し、休憩中に意見を聞いてもらうことしかできないのですが。

昨今、政務調査費の違法支出に関する住民訴訟で議員側が敗訴したり、あるいは住民監査請求において多額の返還を求められる監査結果が出されたりしています。それを受けて、高槻市議会でも、平成20年度から、領収書を1円のものから公開しようという流れになっています。また、政務調査費は会派に支給されていましたが、これを基本的には議員支給とすること(ただし会派共用費を認める)もほぼ確実です。

これはよいことだと思うのですが、首を傾げざるをえない取り決めもされつつあります。


その一つが「広報費」の新設です。「広報費」が政務調査費とは別に設けられるのではなく、政務調査費の中の一項目として「広報費」を認めようとするものです。

現在の条例では、純然たる政務調査活動のみが費用の支給対象で、広報費は認められていません。しかし、某会派は「印刷費」と称して、脱法的に(監査や判決では「違法」とされる可能性も)広報に使用していました。それを、この機会に、合法化するよう紛れ込ませるつもりなのかもしれません。

以下は、高槻市政務調査費の関連法規からの抜粋です。「広報費」などは一切含まれていないこと、認められないことがお分かりになると思います。

地方自治法
第100条
13 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。
14 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。

高槻市議会政務調査費の交付に関する条例
(趣旨)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第13項及び第14項の規定に基づき、高槻市議会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、議会における会派に対し政務調査費を交付することに関し必要な事項を定めるものとする。
(使途基準)
第5条 会派は、政務調査費を別に定める使途基準に従って使用するものとし、市政の調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならない。

高槻市議会政務調査費の交付に関する条例施行規則
(使途基準)
第5条 条例第5条の使途基準は、別表の左欄に掲げる区分に応じ、概ね同表右欄に掲げるとおりとする。
別表(第5条関係)
政務調査費使途基準
項目
内容
研修会・会議費
市政に関する調査研究のための研修会及び会議に必要な経費(講師謝金、出席者負担金・会費、会議等賄い費、テキスト代等)
資料費
市政に関する調査研究のための資料の購入及び作成に必要な経費(図書、資料等購入費、翻訳料、印刷費、写真・コピー代等)
使用料及び借上料
市政に関する調査研究のための会議室、車等の使用及び借上げに必要な経費(会場使用料、自動車借上料、事務機器リース料等)
通信運搬費
市政に関する調査研究のための通信運搬に必要な経費(送料、通信料等)
消耗品費
市政に関する調査研究のための消耗品その他事務に必要な経費(文具費、燃料費、消耗器材費等)
交通費
市政に関する調査研究のための移動に必要な経費(交通費、旅費、宿泊費等)
事務雑費
その他市政に関する調査研究のために必要な経費(事務機器の購入及び修理代、調査研究の補助職員を雇用する経費その他調査研究に要する経費で上記項目に該当しないもの)



「広報費」の新設について、議会事務局は、過去からの慣習で認められているとか、議長会が示した雛型には入っていたとか説明しましたが、やはり、条例を素直に読めば、広報費は認められるべきではないと考えます。条例があるのに、慣習でやってきたからOKというのなら、条例が存在している意味がありません。

また、政務調査費の中に広報費を認める場合、政務調査をお金をかけて行った議員は、広報費として使えるお金が少なくなるという不公平が生じますし、もしかすると、広報費の予算をあらかじめ確保する議員や会派が現れたりすると、実質的な政務調査のための費用が減ることになることも懸念されます。

先日、高槻市においても、政務調査費について住民監査請求が起こされました。結果はどうなるか分かりませんが、もしこの「広報費」について「否」とされれば、条例改正の際に「広報費の新設」を持ち出した場合、「監査では広報費が認められなかったのに、市議会は、政務調査費の使途基準を後退させて、広報費を合法化しようとしている」との批判を受けても仕方がないのではないでしょうか。

私は、監査の結果が出るまでは「広報費」を新設するのには反対です。会派によっては、今年度も、政務調査費のうちから実質的な広報費としての使用をしているかもしれませんが、違法と判断されるおそれが高いので、やめるべきだと思います。

また、「按分」というやり方も拡大される見通しです。「按分」というのは、たとえば携帯電話を私用にも公用にも使っていて、政務調査の分としてどれだけ使用したか判然としない、といった場合、「1/2が政務調査に充てられたと見なそう」と考えるやり方です。

「按分」については、これまで電話代にだけ認められていたものが、以下のものについても適用される見込みです。

1.「回数券・プリペイドカード類」:按分率1/2、上限5000円
2.「電話代(固定・携帯・FAX)」:按分率1/2、上限10000円
3.「ガソリン代」:按分率1/2、上限10000円
4.「パソコン等事務機器」:按分率1/2(最終の所有権は議員個人)
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確かに、按分でなければ、やりにくくて仕方のない部分もありますし、判例でも便宜的に按分がされていることもあります。しかし、按分率が多くの項目で認められると、せっかく領収書が公開されても、実際は何に使われたのかが分かりにくくなるというデメリットも生じます。

仮に、上記の按分が認められている1~3を上限額一杯使用すると、これだけで2万5000円になります。月額7万円の政務調査費の中でのこれだけの金額というのは、大きな割合ではないでしょうか。

また、広報費については、政務調査費の交付総額の50%まで使えるので、月に3万5000円使えます。

すると、それだけで、月額7万円のうち6万円。実質的な「議員の調査研究に資するため必要な経費」が、場合によっては、この中に含まれない可能性もあります。そのようなものを、これだけ大きな割合で認めていいのでしょうか?私には、政務調査費の使途基準を後退させているように思えてなりません。

これで市民の皆さんに納得してもらえるのかどうか・・・条例改正の前に、少なくとも、住民監査請求の行方を見守ったほうがよいのではないかと思います。