【市バス】外部監査も調査委と同じ結論ですが・・・

産経新聞平成19年12月28日朝刊高槻市営バス住民監査請求結果

私が一連の市バス事件に関して住民監査請求を行ったことは以前ご案内したとおりです。

この監査請求については、監査委員に元市バストップ(自動車運送事業管理者)がおられることなどから、外部監査を要望していたのですが、送付された通知書によれば、そういった理由ではなく、「本件請求については、より客観性を確保するため、外部監査による監査が相当であると判断」し、「個別外部監査契約に基づく監査によることに決定」したとのことでした。

そして、昨日、外部監査人による個別外部監査の結果が出されました。それは調査委員会の出した結論と同じものでした。私は大変失望しました。

今朝の産経新聞を読むと、写真のとおり、この監査結果を受けて、市バス代走問題が「決着済み」なんて書かれてます。でも、まだまだ決着はついてませんよ!(笑)当然、「住民訴訟」という次の段階に進むことを考えております。

しかし、外部監査の報告書をよく読むと、結論は調査委員会と同じものでも、そこに至るまでには随所に外部監査人の「良心」を感じる部分がありました。

たとえば、有給職免については・・・

3.有給で行われる職務専念義務免除について
(中略)
(2)有給職免の範囲及び運用方法の妥当性について
(中略)
 本来、免除対象となる活動は、明文の規定を定めた上、その規定に照らし決裁を行うべきであり、現状の運用は妥当性に欠け、労使間の馴れ合いに基づく不適切な決裁が行われ続けてきたという批判を受けてもやむを得ないと考える。
(中略)
 なお、行き先(宿泊先)は上部団体等の決定によるものであり労組側で決定するものではないが、いわゆる観光地等が多く、社会通念に照らし批判を受けてもやむを得ない旨、付言する。
 有給職免については、全庁的な見直しが進められ、平成19年12月1日より無給として運用されている。



と、指摘しています。

有給職免は、地方公務員法の規定に基づき「適法な労使交渉」を行う場合以外は違法なのですが、その違法性には踏み込んでいないものの、明文化された規定がなかったことについて言及してくれていますし、労使間の馴れ合いや、有給職免で労組幹部らが宿泊した先の多くが観光地であることも述べてくれています。

また、労組幹部優遇ダイヤについても、

4.労組幹部優遇ダイヤについて
(中略)
(2)職場離脱時間の認定方法及び結果
 職場離脱時間の認定について、交通部関係者に対し状況を聴取した結果、労組幹部が待機時間中に職場離脱を行っていたとしても、その事実及び時間を客観的に裏付ける手段はないものと判断した。
 労組幹部が調査委員会に対し職場離脱時間であると自己申告した時間について、この事実を推測しうる組合上部団体等からの開催通知等と一部照合できるものもあったものの、単に個人の手帳に記載された事実により自己申告している場合も多く見られ、客観的な検証は実施できなかった。
(中略)
(3)労組幹部優遇ダイヤの妥当性について
 組合幹部以外の者については運行ルートが日替わりとなっている一方、労組幹部については、ほぼ平日のみ固定ルートで、その運行時間も短く、特に平成18年3月31日以前については、乗務時間がさらに短かった。これと表裏の関係にある長時間の待機時間についてであるが、平成19年3月をサンプルとして労組幹部以外の待機者の配置状況を調査したところ、労組幹部が待機する日であるかに関わらず一定であることが確認されている。換言すれば労組幹部による待機の必要性にはかなり疑問がある。
(中略)
 勤務予定時間に組合活動が必要となった場合、これがバスの乗務予定時間であれば、代走を依頼せざるを得ない一方で、待機予定時間中であれば職場離脱は十分可能な状態であったものと推察される。
 本件の場合、代走についてはその事実を示す証拠資料が十分であるものについては、事後的にも不当利得として返還を求める手段が残されていた一方、交通部当局が、労組幹部に対し必要性に疑問のある長時間の待機時間を認めてきたこと、かつ職場離脱の事実があったのかどうかの判断もできない状況は、杜撰といわざるを得ず、結果、組合幹部の自己申告による以外、不当利得を返還させる手段を喪失せしめたということは管理上の責任であると考える。
 このように考えれば、職場離脱の事実の有無に関わらず、必要性に疑問のある長時間の待機時間を供与していたことは、交通部当局による実質的な優遇ダイヤであるとの批判も免れないと考える。



と、このように、たくさんの紙面を割き、指弾してくれました。しかし、後述しますが、不自然なことに、結局はこれを不当利得の算定には入れてくれなかったのです・・・

不当利得については、外部監査人も、以下のように、調査委員会と歩調を合わせたような結論を記しています。

5.不当利得についての検討
(1)代走について
 代走は前記認定のとおり、組合役員等が組合活動のために、他の職員に勤務の交代を依頼し、自らは勤務を行っていなかったものであるから、その対価として支払われた給料等は法律上の原因無くして支払われたものとして、不当利得に該当するものと解される。



まあ、これは当然ですね。

(2)有給職免について
(中略)過去の先例に照らして任命権者によって決裁され、職務専念義務を免除されてきたものと認められるから、有給職免の範囲の妥当性の問題はあるものの、職員に対して支払われた給与が法律上の原因を欠くものとして、不当利得に該当するとは言えないものと解される。



市職員の労働組合活動に関する有給職免については、実は、別の条例に違反しているのです。ですので、この監査結果は失当なのですが、それについては後日詳細を書きたいと思います。

(3)労組幹部優遇ダイヤについて
 請求人は、労組幹部には、いわゆる「労組幹部優遇ダイヤ」が存し、このダイヤによって勤務時間の後半に空き時間が生じているから、この部分について支払われた給与は不当利得であると主張する。
 確かに労組幹部には一般職員とは異なったダイヤが組まれていたこと、他に予備勤務者(待機者)が存するにもかかわらず、労組幹部に上記空き時間が与えられていたことからすれば、現実の必要性を超えて待機者を配置していた疑いは強い
 しかしながら公共交通機関としての使命から、職員の体調不良や交通渋滞という不足の事態に備えるため、待機者を十二分に配置することも、その妥当性は別として、違法とは言えず、したがって上記空き時間に対し支払われた給与についても、不当利得と言えるものではない。
 ただし上記空き時間は、あくまで不足の事態に備えた待機時間であるので、即時に就労可能な状況を超えて職場を離脱していた場合には、不当利得と解されるものである。



労組幹部優遇ダイヤに関する疑義を提起しながら、最後には妥当だったように結論付けるのは、なんとも無理がありますね。

「現実の必要性を超えて待機者を配置」していても、「十二分に」配置したことは違法ではない、とは・・・毎日4人も余計に配置していたら、明らかに税金の無駄遣いですよ。

監査報告書の不自然な感じはさらに続きます。

6.不当利得返還請求額の算定について
(1)
(中略)ところで民法167条第1項の規定を適用すべきか、地方自治法第236条第1項を適用すべきかについては、当該債権が私法上の債権であるか公法上の債権であるかによって区別するのが一般的であるところ(最高裁昭和46年11月30日判決)、本件における給与等にかかる不当利得返還請求権については、恩給給与金の過誤払金の返還請求権を公法上の債権として、その消滅時効会計法上第30条により5年間であるとする内閣法制局意見(法意昭33.2.4法制局1発第5号)からも、公法上の債権と判断すべきものである。
 したがって本件での消滅時効の期間、すなわち遡及期間は5年とすべきである。
 5年間遡及した不当利得金額は、13,685,950円である。



公法上の債権か、私法上の債権か。これによって、時効が5年か10年か判断が違ってくるので、どの職員がお金を返さなければならないのかという責任の範囲や金額的には大きな問題です。

「公法上の債権」という言葉は耳慣れないと思いますが、これは「行政権の主体として一般私人の有しない特別の権能に基づき生ずる債権が公法上の債権」であるとの説が有力のようです。

この件に関し、過去、最高裁においては、「公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるから、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は,地方自治法236条1項所定の5年ではなく,民法170条1号により3年と解すべきである。」とか、「水道供給契約は私法上の契約であり、したがって、被控訴人が有する水道料金債権は私法上の金銭債権であると解される。」といった判決が下されています。

上記の判例から考えると、公営企業である高槻市営バスにおいて、運転手の職員に対し給与を支払う行為というのは、私営バスにおけるそれと本質的な差異はなく、これを過払いした場合の返還請求についても同様であると考えられ、私法上の債権であることは明白です。

監査報告書に示された「恩給」は、国による特殊な給付なので、これを単なる給与と同列に論じることはできないはずです。

それはさておいても、外部監査人がこの項では不当利得を一旦「13,685,950円」と算定していながら、次の項では「9,042,689円」に減額するという不可思議・・・

(2)
(中略)その資料の保存状況については両営業所で大きく異なり、平成16年4月1日以降は両営業所とも上記三種の資料が揃っているのに対し、同年3月31日以前については、緑が丘営業所が平成15年11月の勤務割出表を除き、他の資料はすべて存在するものの、芝生営業所では欠落しているものも多く、代走の事実の認定において最も有力な資料であるべき乗務日報については、平成16年3月31日以前の乗務日報はすべて廃棄されて存在しない。(なお、上記三種の資料の保存期間は長くても1年であるから、廃棄されたことについては何ら問題は無い。)
 したがって代走に関与した職員が、芝生営業所に勤務していたのか、あるいは緑が丘営業所に勤務していたかにより、請求を受ける金額に大きな差異が生じることになる。
 ところで、職員に対し不利益処分を課する場合には、証拠によって明確に認定できるということに加え、不利益処分の公平性についても十分配慮しなければならないものであるところ、実際、高槻市においては、職員に不利益処分を課する場合には、従来から、「公平」「平等」「均衡」に十分配慮して処分がなされてきたことが認められる。
 以上の事実に、本件代走が古くからの慣行としてなされ、代走を依頼した職員において違法性の認識が希薄であったという事実等も総合考慮すれば、代走に関与した職員につき、同一の資料が残存している範囲についてのみの返還を求めるのが、不利益処分としては相当と判断される。
 したがって、両営業所に共通の資料が存在し、不利益処分が課される職員間の公平性が保たれる、職場離脱並びに代走に係る平成16年4月1日以降についての返還を求めるのが相当である。
 以上から、不当利得返還請求額は9,042,689円である。



これはおかしいでしょう。重い罪と軽い罪があったら、公平にするために、軽い罪のほうに合わせるんですか?で、その根拠が、高槻市が公平・平等・均衡に配慮してきたからだと?それはどこからそういうことになったのですか?交通部における飲酒の処分については、不公平・不平等・不均衡のようですが。そんな高槻市役所の変な物差し(物差しにすらなっていませんが)をここで唐突に出されてきても、困るんですが(笑)。

また「代走を依頼した職員において違法性の認識が希薄であったという事実等も総合考慮すれば」とされていますが、代走が違法であるという認識があったからこそ、代走願いをすべて破棄したり、代走が発覚しないよう点呼記録表を消しゴム改ざんしたりしたわけです。代走という違法行為を、公文書の破棄・改ざんという違法行為で隠蔽したのですから、極めて悪質な事例として考慮すべきはずです。

で、そんな不自然な根拠によって、13,685,950円(これでも少ない)から9,042,689円に減額されてしまったのです・・・もしかして、調査委員会の出した数字に無理やり合わせた(合わされた)のでしょうか?

7.不当利得返還請求の対象者
 不当利得返還請求は、違法な支出によって損失を被った者から、不当な利得を得た者に対して請求し得る権利であるから、返還請求の対象者は代走により勤務せず、また職場離脱を行ったにもかかわらず、給与を受給した者である。
 なお請求人は、交通部当局も連帯責任を負うべきと主張するが、不当利得返還請求についての法理に基づき、利得を得ていない者への請求はできないと言うべきである。



市バスにおける一連の犯罪は、労組側だけでは実現不可能であり、当局側との共謀なしにはできないものでした。この監査報告書でも、交通部当局の「管理上の責任」については言及されています。なのに、何故、労組幹部や組合員だけが返還せねばならないのでしょうか?

不当利得の返還を求められている労組の幹部らですが、「犠牲者救援金」というもので、不当に返還金をまかなおうとしていることは先日書いたとおりです。こんなことを許すべきではありませんが、この「犠牲者救援金」で労組役員らは返還金を賄えるから、不当利得の返還は、すべて労働組合側に押し付けてしまえという計算が、労使双方に働いているのではないでしょうか?


以上のとおり、外部監査の結果も、まったく納得のできない不当なものでありました。法廷で、本当の決着をつけるために、来年もますますがんばりたいと思います。