【福祉事業者不正選定】「仮の差止め」なるか?新たな事実を発見!

高槻市が、過去に補助金詐欺事件を起こし、前市長らが天下っている社会福祉法人を、特別養護老人ホームの事業者に不正に選定した件について、住民訴訟を起こしたことは既報のとおりですが、これに併せて「仮の差止めの申立て」というものも行っています。

「仮の差止め」とは、弁護士法人淀屋橋・山上合同のサイトによると、「裁判所が、行政庁に対し、処分を行うことを差し止める裁判をすることができるという制度」とのこと。

高槻市が、予定どおり、今年3月に問題の社会福祉法人に対して補助金を支給し、特別養護老人ホームが建設され、介護事業が開始されてしまえば、高槻市民の福祉と高槻市の会計に回復できない損害を生じさせてしまうため、緊急の必要があると考え、「仮の差止め」の申立てを行いました。

しかし、弁護士さんに相談すると「これだけの証拠では、裁判所が動いてくれるかどうか分からない」とおっしゃられたので、審査会における採点についてもう一度調べてみました。

すると、さらに不審な点が次々と浮かび上がってきました。それをまとめたのが次の表です。(左は採点表の審査項目、数字は点数。分かりやすくするために、点数は乗率をかける前のものにしています)

保険福祉施設
施設整備審査会
15年度
第3回
15年度
第4回
18年度
第2回
疑惑の選考
19年度
第3回
不審点
審査会開催日 15/08/20 15/09/25 18/12/11 19/12/14
整備施設 特 養 ケアハウス 特 養 保育所



敷地 所有地 4 4 5 審査項
目が大
幅に変
更され
たため
比較不
抵当権が設定
されているのに
減点されず
取得見込地
借地
交通・
接近条件
駅への接近度 1 1 2 前と同じく「バス
停から100m超

なのに得点アップ
構造設備


5


5


4 18年度だけ相対評価
資金 4 5 5 施設急増で自己負担
なのに最高得点
地域性 3 4 2 18年度だけ相対評価
事業評価 5 5 4
法人の適格性 5 5 5 4 削除した審査項目を
「集約した」という嘘


社会福祉法人として過去に
トラブル等があったか
  変な印 項目削除 項目削除 過去にトラブルある
のに減点されず
・他に施設整備を図っているか -5 -5 項目削除 -2 ずっと減点されて
きたのに、18年度
だけ項目丸ごと削除

19年度に項目復活
の怪



上の表を参照しながら、以下の文章をお読みください。


1 不当に削除された「他に施設整備を図っているか」の「-5点」

平成18年度の審査会の採点表においては、それ以前には存在していた「その他」の項目にあった「社会福祉法人として過去にトラブル等があったか(±5点)」という審査項目が削除されていますがが、同時に、同じ「その他」の項目にあった「他に施設整備を図っているか(±5点)」という項目も削除されていることが分かりました。

問題の社会福祉法人(以下「A法人」とします)は、18年度の「疑惑の選考」以前にも、次の高槻市福祉施設の整備事業者選定の公募に応募し、審査会において、「疑惑の選考」と同様の採点をされています。

(1)平成15年度第3回審査会(平成15年8月20日)
  ・特別養護老人ホーム整備事業者に係る選定
(2)平成15年度第4回審査会(平成15年9月25日)
  ・ケアハウス整備事業者に係る選定

この平成15年度の2回の審査会の採点表において、A法人は、「他に施設整備を図っているか(±5点)」の審査項目において、「-5点」が付けられています。これは、問題の社会福祉法人が、すでに別の特別養護老人ホームとケアハウスを運営しており、補助金を受けているためです。

しかし、平成18年度の「疑惑の選考」においては、この、「他に施設整備を図っているか(±5点)」の審査項目が削除されていたため、「-5点」の減点がされませんでした

ところが、この審査項目は、平成19年度第2回の審査会において、何故か復活し、平成19年度第3回の審査会で、新たな保育所の事業者として応募したA法人は、この審査項目について、またもや減点がされているのです。

審査会は、平成18年度のみ、「その他」の項目に属する「社会福祉法人として過去にトラブル等があったか(±5点)」と「他に施設整備を図っているか(±5点)」の2項目を、合理的な理由もなく削除したのです。この削除がなければ、問題の社会福祉法人は、少なくとも「他に施設整備を図っているか(±5点)」で-5点の減点を受けていたはずであり、「社会福祉法人として過去にトラブル等があったか(±5点)」に関しても適切に減点していたならば、さらに合計得点は減少していたはずです。

高槻市は、平成18年度のみ、審査項目「その他」を削除することにより、不当な採点を行ったのです。


2 不当に1点加点された「駅への接近度」

平成15年度の第3回と第4回の審査会において、審査会は、A法人の採点表中の「駅への近接度」の審査項目につき、「1点」としました。この理由は、同審査項目の「格差の内訳」に記載された基準であるところの「(駅から)1km以内=4、2km超=3、3km=2、3km超=1、高槻以外の場合は-1、バス停から100m以内は+1」に照らせば、A法人が、特別養護老人ホームあるいはケアハウスを建設予定としていた住所が、「(駅から)3km超=1」という条件に該当し、かつ「バス停から100m以内は+1」の条件に該当しないためです。

A法人が、「疑惑の選考」において、特別養護老人ホームの建設予定地とした住所は、上記と同じ場所なのです。しかし、審査会は、A法人の採点表中の「駅への接近度」について、某バス停の「100m以内」との理由を付けて「2点」としました。

けれども、平成15年度以降にこのバス停が新設や移動された事実はなく、平成15年度の審査会で採点された時と何ら条件に変化はないのです。つまり、同じ位置関係にあるにもかかわらず、平成15年と18年の評価において、高槻市は、矛盾する採点をしたのです。

地図上で計測しても、このバス停からA法人の特別養護老人ホーム建設予定地は、100m超離れており高槻市が掲げた「バス停100m以内」との理由が虚偽であることは明白です。高槻市はこの審査項目でも、不当な採点を行ったのです。

高槻市が過去に行ってきた採点の経緯からしても、少なくとも、「他に施設整備を図っているか(±5点)」で-5点の減点、「駅への接近度」は2点ではなく「1点」とされなければならなかったのです。そうすると、A法人の合計点は少なくとも74点以下。「疑惑の選考」で2位となった法人の合計点は75点ですから、順位は逆転していたことになります。


3 適切な減点がされなかった「敷地」

「疑惑の選考」におけるA法人の採点表中の「立地条件」の「敷地」においては、A法人が、特別養護老人ホーム建設予定地を所有していることから、満点の「5点」とされ、これに乗率「3」がかかり、15点の得点となっています。

この審査項目「敷地」の「所有地」の「格差の内訳」に記載された得点の基準は「5:-1、-2(所有権以外の権利等の設定、内容)」というものです。「土地を所有していれば満点は5点だけれども、所有権以外の権利などが設定されていれば、内容によって、1~2点減点します」という意味です。

しかし、「疑惑の選考」にあたって、A法人から高槻市に提出された特養建設予定地の登記簿謄本の写しによれば、この建設予定地には独立行政法人福祉医療機構によって平成17年5月に、債権額金3億円の抵当権が設定されているのです。

3億円もの抵当権設定は、高槻市が設けた基準である「所有権以外の権利等の設定」に該当することは明白です。高槻市は、この審査項目でも、不当に減点しなかったのです。


4 常識では考えられない「資金」の採点結果

A法人は、17年5月1日にグループホーム、18年4月1日にケアハウスと、矢継ぎ早に施設を建設し、さらには保育所の改修工事まで行っています。これらの事業については、高槻市から補助金を交付されています。しかし、補助金で事業経費のすべてをまかなえるわけではなく、事業経費と補助金の差額はA法人の自己負担なのです。

平成17年に、高槻市からA法人に対して通知された「社会福祉施設等施設整備費及び施設整備費補助金交付決定通知書」に基づいて、福祉施設の事業経費と補助金、そしてその両者の差額(自己負担分)を下記に一覧表としてまとめてみました。

施設の種類 事業に要する経費 補助金の額 差額(自己負担分)
1 グループホーム ¥166,882,000 ¥37,460,000 ¥129,422,000
3 ケアハウス ¥221,796,300 ¥61,003,000 ¥160,793,300
3 保育所 ¥328,501,822 ¥137,090,000 ¥191,411,822
12 ケアハウス ¥446,222,500 ¥142,340,000 ¥303,882,500
合計 ¥1,163,402,622 ¥377,893,000 ¥785,509,622



A法人では、平成17年のおよそ1年間で、7億8550万円もの自己負担金が発生している計算となります。

上の表には、今後建設予定としている特別養護老人ホーム(平成18年度の「疑惑の選考」によって選定されたもの)や保育所(平成19年度に審査会で選定されたもの)は、含まれておりません。もしこの2つを含めたならば、A法人には、わずか数年で、莫大な自己負担金が発生することになり、資金的なリスクが非常に高まることは容易に推測できます。

施設の新設には、新入社員の人件費や教育費などのコストもかかりますし、建設費以外にもリスクの要因があります。

しかし、「疑惑の選考」において、高槻市は、A法人の採点表中の審査項目「資金」について、A法人を相対評価で1位として5点を与えました。これも不当な採点といえるでしょう。


5 平成19年度の「絶対評価」から見える「疑惑の選考」の異常

平成19年6月15日に、平成19年度の第1回の審査会が開催され「小規模多機能型居宅介護及び認知症対応型共同生活介護に係る事業者」の選考が行われ、この事業者の公募に応募した2法人から1法人が選定されました。

この選考の議事録を読むと、「法人の適格性」について、標準を「5点」とし、1法人を「5点マイナス2点で3点」、もう一方の法人を「5点マイナス1点で4点」としています。高槻市はこれまでずっと「相対評価」をしてきたと主張していますが、2者に相対的な優劣をつけ比較するならば、標準点をおく必要はありませんし、また両者共に標準点から減点する必要もありません。つまり、この平成19年度の第1回の審査会で採られた採点方法は、明らかに「絶対評価」なのです。

「疑惑の選考」以前の選考に関しても、明らかに絶対評価がなされてきました。一方、「疑惑の選考」のように、応募法人の採点表の審査項目に、①②③④⑤と明確な順位を付け、それに応じてそれぞれ5点、4点、3点、2点、1点と点数を配するような相対評価は、「疑惑の選考」以前も、それ以後も、まったく見られません。「疑惑の選考」のみにおいて、如何に異常な評価方法が採られたかが分かります。

つまり、「疑惑の選考」において、高槻市は、強引に「相対評価」をすることによって、不当な点数操作を行ったのです。


6 住民監査請求における高槻市の不可解な意見陳述

「疑惑の選考」について私が起こした住民監査請求により、平成19年11月8日に行われた関係職員の意見陳述において、高槻市は「絶対評価とは、請求人(私)の言うとおり、一定の基準に達していれば所定の点数がされるというものですが、法人の適格性の項目について、本審査会においては以前から一度もそのような取り扱いを行ったことはなく、本件選定以前の過去の審査会においては、一度たりとも相対評価がされたことがないとする請求人の主張は、誤り」と言い切っています。

このように、高槻市は一貫して「相対評価」を行ってきたと主張したのですが、一方で、同じ意見陳述の場において「本審査基準における相対評価は、一定の基準(標準に達していたならば、5点)を設けた上で、各々の事業者の優劣を比較検討しているものです」とも述べています。

「一定の基準」を設けるということは、それすなわち絶対評価である証です。相対評価であれば、そうした一定の基準は必要なく、応募法人の優劣のみを比較すればよいのですから。

高槻市が「疑惑の選考」以外の選考で行ってきた評価は、明らかに「絶対評価」であり、「相対評価」では決してないのに、虚偽を強弁しているところからしても、高槻市が、「疑惑の選考」において、誠実な採点・評価をしておらず、結果ありきの恣意的なやり方をしていたことがうかがえます。


以上について、補充書と証拠を裁判所に提出しました。高槻市は明らかにいかがわしいことをしたわけですから、高槻市民のために、是非とも「仮の差止め」をしていただきたいと願っています。

こうやって、あらためて調べていく中で、更なる疑惑も浮上してきました。しかし、字数が多くなるので(昨日も「北岡さんのブログは文字が多い」と怒られました)、また次の機会にしたいと思います。

この件に関する住民訴訟の第1回口頭弁論は、2月28日午後2時から、大阪地方裁判所8階の806号法廷で行われます。ぜひ傍聴にお越しください。