【特養選定訴訟控訴審】判決は7月17日

本日は、特養事業者不正選定訴訟の控訴審の第1回の弁論がありました。

あっさりと裁判は終わり、今日で結審となりました。判決は7月17日13時15分から言い渡されるとのことです。

押してみてねクリックに感謝!

以下は、控訴審において、私が大阪高裁に提出した控訴理由書です。

平成21年(行コ)第28号 補助金差止等(住民訴訟)請求事件
(原審事件番号:大阪地方裁判所平成20年(行ウ)第5号)

控 訴 人 北岡隆浩
控訴人 高槻市


控訴理由書

平成21年4月7日
大阪高等裁判所第13民事部B係 御中

控訴人  北岡隆浩

第1 原判決の誤り

 原判決には以下のとおり事実誤認の違法があり取消しを免れない。

1 採点者たる被控訴人の主張の矛盾を見逃している

 平成20年4月30日付控訴人(原告)準備書面1の第3の5乃至8並びに平成20年11月4日付控訴人準備書面2の第2の3に詳述しているが、被控訴人(被告)は、採点表における「構造設備」、「資金」、「地域性」、「事業評価」及び「法人の適格性」の5つの審査項目の採点について、明らかに矛盾した主張をしている。
 これに対し被控訴人は「どのような審査項目を設けるか、絶対評価をするか否かは、裁量の範囲に属し、本件選定に裁量権の逸脱はない」と言い逃れをしている。
 しかし、採点方法に関して虚偽を主張する採点者の採点を信用することは到底出来ないのであるから、被控訴人は、公正な採点者としての体をなしていない。これは、行政に対する信頼を失墜せしめる重大な問題であり、裁量権の逸脱又は濫用であることは明らかであって、故意であることは明白であるから、詐欺とも評価すべきものである。
 けれども、原審は、上記被控訴人主張の矛盾が重大な要素であるにもかかわらず、これを見逃し、まったく判断をしていないのであるから、その判断は失当であったといえる。

2 一貫性こそが公正な採点を担保する

 「構造設備」「資金」「地域性」「事業評価」「法人の適格性」の5つの審査項目について、原審は「本件選定における評価方法は一貫性に乏しい」と認めながらも、5つの審査項目は「数値化が困難なもの」で、どのような採点をするかは「評価者の裁量にゆだねるべき性質のものであることからすると」、「不当なものとまでは認められない」とした(原判決12頁下から4行目乃至13頁3行目)。
 上記審査項目については、標準を5点として、その5点から1~4点を減点する採点がされてきた(ただし、本件訴訟における本件選定においてだけは、不当にもそのような採点はされなかった)。しかし、被控訴人は、この減点に関する基準を設けていない。
 では、上記のとおりの減点基準の設けられていない状況で、どのように公正な採点を担保すべきか。それは、判例法同様、「過去から一貫した採点をする」ということしかないはずである。
 しかし、原審も認めるように、本件選定においてのみ、「一貫性に乏しい」相対評価による採点がされたのであるから、公正な採点がされたとはいえない。よって、原審の判断は誤りである。
 また、原審は上記審査項目の採点に関して「数値化が困難なもの」と判断しているが、被控訴人は、本件選定までの選定において、一定の採点をしてきたのである。上記審査項目に明確な減点基準を設けてこなかったのは(あるいは減点基準があるのに隠蔽しているのは)、恣意的な採点を行うための被控訴人の不作為といえるのであり、悪意をもって本件選定においてのみ特異な採点をしたことは明らかである。

3 乙第10号証「老人福祉施設等整備選考基準」は証拠採用できない

 原審は、「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)をもって、「社会福祉法人として過去にトラブルがあったか」、「他に施設整備を図っているか」及び「資金」の審査項目の解釈を行っている(原判決11頁15行目乃至12頁3行目、及び13頁16乃至18行目)。
 しかし、本件訴訟に前置された住民監査においては、本件選定における採点表の各項目の評価・採点に当たって、国の通知「社会福祉法人の認可について(平成12年12月1日)」、高槻市の「特別養護老人ホームの整備事業者選定基準(平成15年6月10日実施)」及び「高槻市介護老人福祉施設特別養護老人ホーム)整備事業者募集要項(平成18年9月)」を基に行われていると判断されている(甲8の4頁下から3行目乃至5頁3行目)。
 上記住民監査における関係職員陳述(甲21)及び関係職員事情聴取においても、「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)を採点の基準や根拠としている旨の主張は一切無い。
 つまり、「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)は、本件選定において、まったく採点の基準とはされていなかったのである。
「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)は、いつ、誰が、何を根拠として作成したものかもまったく不明な代物であり、証拠として採用することはできないから、これに拠った原審の判断は誤りである。

4 他の候補者の応募書類を開示して判断すべきである

 原審は、「資金」の審査項目について、「■■以外の候補者がこれらの点で勝っていたと認めるに足りる証拠もないことからすれば、いずれの点についても評価に誤りがあると速断できるものではない。」としている(原判決13頁16乃至22行目)。
 控訴人は、社会福祉法人■■(以下「■■」という。)が、(中略)矢継ぎ早に施設を新設するなどし(これほど短期間に事業を拡大させている社会福祉法人高槻市内には他に存在しない)、それに伴って莫大な自己負担金や借入金が発生している状況からして(平成20年4月30日付け控訴人準備書面1の第3の5)、「資金」の採点を1番高い点数とするのは、極めて不自然であると訴えたが、これを、原審が判断するとおり、他の候補と比較しなければならないというのであれば、原審は、被控訴人に対して、他の候補の応募資料などを開示させるべく訴訟指揮をとるべきであった。
 控訴人は、改めて、他の候補者の応募資料の開示と、これの審理を求めるものである。

5 その他の被控訴人有利に偏った誤った判断

 (1)「社会福祉法人として過去にトラブルがあったか」及び「他に施設整備を図っているか」の削除

 原審は、本件選定以前に■■が立候補した選定には存在していた「社会福祉法人として過去にトラブルがあったか」及び「他に施設整備を図っているか」の審査項目が、本件選定の採点表には記載がないことを認めながらも、上記3のとおりの証拠採用すべきでない「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)に拠って、評価に影響がないとして、「特に■■を選定することを意図して恣意的に行われたとは認められない」と判断した(原判決11頁5行目乃至12頁12行目)。
 しかし、審査項目を、その時に限って削除することは、極めて不自然であるし、被控訴人は、この点について、何ら合理的な理由を述べることができなかったのであるから、原審は、被控訴人には、不当な採点を行う何らかの意図があったと判断すべきであった。よって、上記の原審の判断は、被控訴人を有利にするために行った偏ったものといわざるをえない。

 (2)「他に施設整備を図っているか」に関する判断の誤り

 原審は、前項のとおり、証拠採用すべきでない「老人福祉施設等整備選考基準」(乙10)に拠って、「他に施設整備を図っているか」について、「施設運営開始後間もない場合」、「運営実績が示せないこと」及び「経験、運営理念及び社会的信望が明確でないこと」の徴表と位置付け、「一部業者に選定が集中することを回避する趣旨はそこには含まれないと認められる。」と判断している。
 しかし、甲第15号証のとおり、平成19年度第3回審査会における各法人の採点表の「他に施設整備を図っているか」の欄には「保育所創設(増改築を含む)に係る国庫補助金等(平成15年4月以降)が特定の法人に偏らないよう、当該補助金を受けた場合は -2点の減点」と記されている(甲15)。つまり、まさに「一部業者に選定が集中することを回避する趣旨」で「他に施設整備を図っているか」という審査項目は設けられているのである。
 付け加えて言うならば、上記平成19年度第3回審査会においては、(中略)、この審査項目の減点基準に該当するとして、-2点の減点がされている(甲15)。
 よって、上記原審判断は、明らかに誤りなのである。

 (3)「敷地」に関する判断の誤り

 原審は、採点表における「敷地」の審査項目について、「施設の建設予定地の一部に抵当権が設定されているにとどまり」、「抵当権者も独立行政法人福祉医療機構であること」を理由に、「評価に誤りがあると速断できるものではない」としている(原判決13頁12乃至22行目)。
 しかし、採点基準表(甲1)では、「所有権以外の権利等の設定」があれば減点されるとされているだけであり、建設予定地においてどれだけの面積に抵当権が設定されているかの基準は記されていない。また、甲第26号証のとおり、抵当権が設定された面積は敷地の約40%に及んでおり、小さいとはいえない。
 原審は、抵当権者が独立行政法人福祉医療機構であることも、採点が不当ではない理由として挙げているが、独立行政法人福祉医療機構が抵当権者であることが減点の対象とならない根拠は、まったくどこにも示されていない。独立行政法人福祉医療機構等の公的機関であっても、抵当権者であることには変わらないのであるから(例えば、国であっても、税金の滞納等があれば、債務者の資産を差し押さえる)、原審の判断は誤りである。

 (4)「駅への接近度」に関する判断の誤り

 原審は、採点表における「駅への接近度」の審査項目について、「バス停と上記建設予定地の直線距離はおおむね100メートル程度の位置にあると認められること」を理由に、「評価に誤りがあると速断できるものではない」としている(原判決13頁14乃至22行目)。
 しかし、特別養護老人ホームを利用するお年寄りが、空を飛んでいけるわけもないのであるから、特別養護老人ホームの立地について、バス停からの直線距離で考えるというのは、まったく不当である(バス停から建設予定地の入り口までは、どう贔屓目に見ても130メートルはある)。
 何よりも、被控訴人自身が、本件選定より以前の2回もの選定において、同じ位置関係にあるにもかかわらず、同審査項目について、100メートルより離れていると判断して、■■に1点しか付けていなかったのである(本件選定では被控訴人は距離が100メートル以内として2点をつけている)。以前は「100メートルより離れている」と判断していたものを、本件選定においては「100メートル以内」であると判断を変更しているのであるが、このような判断変更を行う合理的な根拠はまったくない。
 この審査項目の注意書きには「100m超」は1点であると、明確な数値が基準として示されている(甲1)。住民福祉のための審査の厳格性及び他の候補者に対する審査の公平性を考慮すれば、100メートルを1センチでも超えれば、1点としなければならなかったはずである。
 にもかかわらず、原審は「直線距離はおおむね100メートル程度」であるから不当な採点ではないと、極めて杜撰な判断をした。これは、行政による不当な採点及び不正な特別養護老人ホーム事業者の選定を、裁判所が助長する危険性があるものであって、社会的にも問題があるといわざるをえない。

6 あまりにも不当な箇所が多過ぎる採点

 以上のとおり、本件の採点については、公正中立であるべき地方公共団体が行ったにしては、あまりにも不当な箇所が多いといわざるをえず、(中略)■■を選定するために、被控訴人が恣意的な採点をしたとしか考えられないのである。この採点結果に基づき行った本件選定は、裁量権の範囲の逸脱又は濫用であることは明らかである。
 控訴人が採点をやり直した結果、平成20年11月4日付け準備書面2の第2の10のとおり、■■の順位は、1位から4位に転落となった。
 被控訴人の採点に不当な箇所が多すぎるのに、原審は、これをことごとく「不当なものとまでは認められない」等と判断したが、採点結果を総体的に見れば、明らかに不当といわざるをえないのであるから、原審の判断は誤りである。

7 その他

 以上に記載した以外の控訴人の主張については、控訴人の平成20年1月18日付け訴状、平成20年4月30日付け準備書面1及び平成20年11月4日付け準備書面2のとおりである。

第2 違法性

 以上のとおり、被控訴人による■■の選定は、裁量権の範囲の逸脱又は濫用であり、違法である。
 原審判決が「補助金を交付すべき事業者の選定が市長の裁量によるものであることを前提としても、少なくとも裁量権の範囲の逸脱又は濫用があれば違法の評価を受け、ひいては、補助金の支出等も違法の評価を受け得るものである」(原判決8頁4乃至6行目)と判示するとおり、本件選定が違法なのであるから、これを原因行為とする補助金支出等も、当然に違法である。

第3 結び

 公正な福祉行政を運営すべき地方公共団体が、お年寄りの終の棲家となる特別養護老人ホームの事業者選定において、上記のとおりの不当な採点を行い、恣意的に選定した事業者に対して、血税から約2億円もの補助金を支給しようとすることは、住民に対する背任行為であり、断じて許すことはできない。
 社会正義の実現のため、本事件について、御庁において正しい判断をしていただきたく、控訴する次第である。

以 上