【厚生会館訴訟】最高裁へ上告

高槻市が、公有財産である高槻市職員厚生会館の一部を、連合高槻に排他的に占有・使用させていたことは、違法な財産の管理に当たるので、市長個人と歴代の総務部長、そして連合高槻に対して、損害賠償請求等をするよう求める住民訴訟を起こし、一審・二審で敗訴しましたが、この度、最高裁判所に上告いたしました。

二審の大阪高等裁判所は、

連合高槻厚生会館不正入居訴訟控訴審判決

「当裁判所は,連合高槻に対する再委託の承認は,労働行政の裁量の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法であるが,厚生会と連合高槻との間の業務委託契約が無効とまでは認められないから,連合高槻が会館の一部を無権原で占有・使用していたとは認められ」ないとして,連合高槻の不法占有に基づく損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権の存在が認められないから,上告人の請求は理由がないと判断しました。

しかし、高槻市長と厚生会との間の業務委託契約第3条には、高槻市長の書面による承諾を得ない限りは、第三者に委託契約に基づく権利又は義務を譲渡もしくは継承できない旨が規定されています。

つまり、市長による適法な書面による承認なしには、厚生会は、他の者に対して、委託契約に基づく業務を再委託することはできないのであり、承認なしに締結された再委託契約は、当然、無効であると私は考えます。

正常な再委託

もし、厚生会が、完全に第三者であれば、多少責任も軽減されるのかもしれませんが、厚生会は,市職員の全員が会員として所属する団体であり,会長は副市長,専務理事は総務部長,また、厚生会の副会長のは、当時、連合高槻の事務局長であったのですから、上位3役が,市及び連合高槻の双方と,相当な利害関係があることは明らかで、完全なる私人あるいは完全なる第三者ということはできないと思います。

やはり、朝日放送「ムーブ!」が指摘していたとおり,高槻市と一心同体の団体であると見做すべきであり,連合高槻とも利害関係のある団体というべきでしょう。

このような状況ですから,厚生会は、連合高槻の不法占有を住民の目から隠すために,高槻市と連合高槻という利害関係者に恣意的に利用されて、形式上、委託・再委託の関係の間に挟み込まれ、いわば「隠れ蓑」として悪用されただけだと考えられます。

こういう厚生会ですので、市長の再委託の承認が存在しなかったり、違法であれば、それを知らないふりをして、第三者に再委託するなんて許されないはずです。

大阪地裁は、踏み込んだ判断をしてくれませんでしたが、大阪高裁は、上記のとおり、高槻市長による再委託の承認を「違法」と断じました。しかしながら、「厚生会と連合高槻との間の業務委託契約が無効とまでは認められない」としたのです。

しかし、平成18年度まで(平成19年3月31日まで)は、市長による再委託の承認すらされていなかったことを、高槻市の監査委員が認めています。

この点、高裁は「その再委託の承認が平成18年度まで正式に文書でなされていなかったことを考慮しても」と、文書によらないで再委託の承認がなされていたものとして認定しているが、高槻市監査委員は「業務契約において,再委託の承認なしに第三者に業務の一部又は全部を履行させていた。」として、会館の管理運営業務に関し、文書の有無を問わず、再委託の承認がなかったと認定しているのです。高裁が、何故に、書面によらないでも、再委託の承認があったと認定したのか、まったく不明です。

連合高槻への再委託は無効

まとめると、市長による適法な書面による再委託の承認を前提としなくては、厚生会は連合高槻と再委託契約をすることができないのですが、平成19年3月31日以前は、再委託の承認は存在しなかったのであり、平成19年4月1日以降は、違法な再委託の承認がされていたのですから、厚生会と連合高槻との間の再委託契約は無効で、連合高槻が会館の一部を無権原で占有・使用していたことは明らかであると考えます。

仮に、高裁の言うとおり、平成18年度まで文書によらずに再委託の承認がされていたと認めるとしても、高裁判決が示すとおり、違法な再委託の承認が、少なくとも平成4年からされていたということになり、14年以上もの間、市長は、漫然と違法な承認をし続けてきたということになりますから、ちゃんと市の財産の管理をしてきたということはできませんし、責任を免れることはできないでしょう。

さらに言うと、連合高槻は、再委託されたとする会館の管理運営業務など、一切行っていなかったのですから、再委託契約は、連合高槻に会館を占有・使用するために締結された「架空の契約」というほかありません。これは詐欺でしょう。

そもそも、市長は、厚生会に対して、労働センター機能など委託していなかったのですから、厚生会が連合高槻に対して、労働センター機能を再委託できるはずがありません。

・・・というようなことなどを理由として上告をいたしました。

しかし、厚生会と連合高槻との間の再委託契約を、単なる私人間の私法上の契約として、市の規則も影響を及ぼさないとし、また、再委託の承認の違法性を認定しているのに、再委託契約自体は違法・無効ではないと、裁判所が判断するならば、厚生会のような、地方公務員のみが組織し、市長とその支持団体の関係者が影響をも及ぼすような団体を、「再委託」という形式で介して、第三者が行政財産を占有・使用することが、無制限に許されることになり、社会的な悪影響が大きいのではないかと思います。

これでは、裁判所が、脱法的な・抜け道的な行政財産の無償占有の方法を認めてしまう結果となりかねないと思いますので、最高裁判所には、ぜひ賢明なご判断をしていただきたいと願っております。