『米百俵』を、もし『サザエさん』で演じたら

青年塾の出発式の余興でやった台本です。


★『米百俵』を、もし『サザエさん』で演じたら

サザエ、登場

サザエ「サザエでございま~す!」

サザエさんのオープニングテーマが流れる。

サザエ「平成8年に、東芝が独占スポンサーを降板して以来、35年の歴史を誇る日曜夜の超長寿番組、わが『サザエさん』においても、出演者のギャラのカットが当たり前になってしまいました。しかし、年末年始のスペシャル番組で、臨時収入が入り、出演者や番組スタッフは、ほっと一安心。私もマスオさんと一緒に、久しぶりに温泉でも、と思っていたんです。ところが・・・」

サザエさんのオープニングテーマ、フェイドアウト

ノリスケ、アナゴ、登場。

ノリスケ「マスオさんいる?」
サザエ「あーらまぁノリスケさん!アナゴさんもご一緒なんて珍しいわね。マスオさんね、ちょっと待ってて。マスオさん!ノリスケさんよ」
  
マスオ、登場。

マスオ「どうしたんだい、ノリスケ君。雨が降るのによく来たね。まああがったら。」
ノリスケ「一大事なんだ!すぐに相談したいことがあるんだよ。今からイササカ先生の所に集まってもらえないか?」
マスオ「いったい何が起こったんだい?」
ノリスケ「僕たちの一大事にかかわる事なんだよ。実は今聞いて驚いたんだが、この間のスペシャル番組で入った1億円の臨時収入なんだけど・・・」 
サザエ「(興奮して)臨時収入がどうしたっていうの?」
ノリスケ「もうたまんないよ。あの1億円の臨時収入を我々には分けないというんだよ。」
アナゴ「何?分けないって?」
マスオ「勘弁カツオ~!」
サザエ「あなたが青年塾にうつつを抜かしてるから、本業がこんなことになったんじゃないの!?あなたが青年塾に行ってる間、私はタラちゃんの育児でノイローゼになりそうなのを我慢してたのに・・・ううう・・・」(泣き出す)
ノリスケ「いや、それとこれとは話が違うんだよ、サザエさん。あいつが、あいつが独断で決めたんだよ。マスオさんや青年塾が悪いわけじゃないんだよ」
アナゴ「誰だよそいつは。そんな馬鹿なことを!」
ノリスケ「はげ爺だよ。つまり磯野波平だよ」
マスオ「波平さんが?信じられない・・・お金を分けないでどうするつもりなんだろう?」
ノリスケ「そのお金で記念館をたてるらしい」
マスオ「ナニ?記念館を建ててどうするんだい!今一番食えないで困っている時に、なんて馬鹿なことを!」
アナゴ「死にぞこないの老いぼれ爺が!あいつは、ギャラももらえないで三河屋から酒をかっぱらってる出演者さえいるこの厳しい状況を知らないのか?記念館なんぞ建て腐って、俺たちを飢え死にさせる気か?」
ノリスケ「だから我々の一大事なんだよ。君も是非一緒にイササカ先生の所に来てほしいんだ。今のうちだったら、プロデューサーに企画を通していないから、出演者一同でその案をもみつぶせるはずだ!」
マスオ「・・・もみつぶすとは?」
ノリスケ「つまり波平に迫って、この記念館の企画をやめさせるんだよ」
マスオ「いやあ、波平さんが、一旦こうと決めたら、考えを変えないよ」
ノリスケ「しかし、マスオさんのような弁の立つ者が・・・」
マスオ「だめだよ、だめだ!僕なんて、波平さんの相手なんかにならないよ」
アナゴ「それじゃつまり、フグタ君はこのまま黙っているのかい?」
マスオ「馬鹿なことをいうなよ。ギャラをチャラにしていいものか!」
アナゴ「ノリスケさん、波平の考えを変えるには、方法は一つしかないぞ」
ノリスケ「そうですね。一つしかないですね」
マスオ「その一つの方法って、まさか???」
ノリスケ「爺を番組から追い出すんだよ」
マスオ「なるほど、それも一つの方法だが・・・しかし・・・」
アナゴ「『しかし』とはなんだ!あのじじいを辞めさせない限りだなあ・・・」
ノリスケ「いや、意見はみんなが集まったときに話そう!とりあえずイササカ先生の所に集合だ!」
マスオ「・・・いや、僕は、波平さんには・・・」
サザエ「あなた、何フニャフニャしてるのよ!これには私達家族の生活もかかってるのよ!青年塾での学びはどうしたのよ!?」
マスオ「・・・分かった。よし、みんなですぐに行こう!」
ノリスケ「おう!」
アナゴ「俺は脇役じゃ本気にならないが、主役待遇の波平なら相手にとって不足は無い。俺をただのうだつの上がらなそうなサラリーマンと思ってナメるなよ、波平!」

マスオ、ノリスケ、アナゴ、肩をいからせて退場。

サザエさんの次回予告のBGMが流れる。

サザエ「さあ、大変なことになってきました・・・さ~て、CMの後の『サザエさん』は『波平、危機一髪』の一本です。(ピーナッツを放り投げて口でキャッチ)ア~ン。ウンガ、グッグッ・・・」

サザエ、退場。

波平が何か書き物をしている。
ふね、登場。

ふね「あなた、まだ寝ないんですか?」
波平「ああ、すまん」
ふね「そんなに起きていると髪の毛に悪いですよ」
波平「いや、もう寝るとするよ。明日は、プロデューサー会議があるからな」
ふね「あなた、本当にお疲れ様。東芝さんが独占スポンサーを降板して以来、あなたは俳優でありながら、夜も寝ないで独自に番組改革案や企画書を作って、一生懸命やってこられましたからね。そのおかげで、徐々に東芝以外のスポンサーも増えて、年末年始のスペシャル番組にも出ることができました・・・本当に感謝いたします」
波平「大したことではない。番組に関わる者であれば当然のことだ」
ふね「・・・今日の夜は、私、サービスさせていただきます」(セクシーに服をはだける)
波平「こら、年甲斐もないことを!」
ふね「臨時収入を見込んで、セクシーなランジェリーも買ったのよ」
波平「いや、あの臨時収入は・・・おい、よしなさい!勘弁カツオ!」

大勢がガヤガヤさけぶ音がきこえてくる(臨時収入を分けろ!ギャラを出せ!)

ふね「外のほうが騒がしいですね・・・せっかくいいところだったのに、勘弁カツオ~♪」

タマ、登場

タマ「ニャーオ!波平さん、早く逃げるニャー!出演者がたくさん押しかけて来て『波平を、政治家として、どつく』とか言ってるニャー!」

波平、髪をとく。

ふね「あなた何をしているんですか?髪の手入れなんかしてる場合じゃないわよ」
波平「別に逃げも隠れもする必要はない。そこの還暦祝いでもらったチャンチャンコをとってくれ」

波平、ちゃんちゃんこを着る

「波平を出せ!ナミヘイヲダセ!話をさせろ!」とがやがや大声を出しながら登場

波平「磯野波平はここにおる!大勢でやってきたのう!」
イササカ「お休みのところ大変申し訳ありませんが、大事な用件でやってまいりました」
波平「イササカ先生、訊きたいことというのは記念館の件でしょう。明日プロデューサー会議があるから、そこでお聞きしますよ」
アナゴ「明日ではだめだ!待っていられるか」
波平「アナゴ君、随分とあせっているじゃないか」
甚六「我々が焦っているんじゃない。波平さん、あなたがせかしているんだ!明日、プロデューサーに、記念館企画の稟議書を回すんだろう!」

波平、黙ってにらむ。

ワカメ「今回のスペシャル番組の臨時収入が、私たちのギャラに回らないって本当なの?」
ノリスケ「出演者にギャラも渡さないで記念館を建てると聞いたが、それは本当ですか?」
波平「君たちの用件とはそのことかね?」
カツオ「そうだよ。そのことをハッキリさせたいから夜遅くに来たんだよ!」

マスオ、進み出てメガネをはずす。

マスオ「波平さん!今夜我々がやってきたのは出演者全員が大変だからだ!あなたもそれぐらい分かるでしょう!答え次第では、我々一同、ストライキも辞さない覚悟だぞ!」

マスオ、メガネを床に叩き付ける。

アナゴ「そうだ!ちょっとプロデューサーのお気に入りだからって、図に乗るなよ!」
タラオ「あなたには、その日暮らしで困っている出演者の現状が分からないんでちゅか。僕なんて、『タラちゃんだから、お小遣い程度でいいよね』って、ギャラを値切られてるんでちゅよ」
イクラ「ハイ~!」
イササカ先生の家の犬のハチ「ワンッ!」
ふね「記念館を建てるなどとふざけたことをおっしゃるなら、わたくしにも覚悟がありますよ!」

ふね、服を脱ぎ始め、スルメのような乳房を取り出すと、ブルース・リーがヌンチャクを使うがごとく振り回す。

一同「それは、勘弁カツオ~!」

波平、立ち上がって、一同をじろりと見渡し、やおら髪の毛をとき始める。

海平「ば、馬鹿にしているのか!どうして髪をとかすんだ!」
波平「おれはハゲだ。睡眠不足が髪の毛に一番こたえる。では帰ってくれ」
花沢さん「それがあんたの答え?カツオ君、一緒にあの髪の毛をむしりとってやりましょうよ!」
カツオ「ぼ、僕はいいよ・・・中島、お前行けよ」
中島「磯野、花沢さんだからって、僕にふるなよ。かおりちゃんなら喜んで行くくせに」
イササカ「まあ皆さん落ち着いて話し合いましょう。こんな長寿番組の準主役のトレードマークである髪の毛をむしり取ったりしたら、明日の東スポの一面に載ってしまいますよ」
サザエ「そうよ、やるならボディーよ。ボディーにしな」(マスオを殴る)
マスオ「こら、サザエ、よしなさい」

波平、さらに気合を入れて髪の毛をとき始める

中島「うわっ、さらに気合を入れて、髪の毛をとかし始めちゃったよ」
海平「波平、なぜ髪をとくのをやめない!」
波平「おれはハゲだ。髪の毛をむしりたかったらむしればよい」
タマ「ニャーオ!波平さん、そんな言い方しないで、ちゃんと答えてあげてほしいニャー」
波平「そんな威圧的な態度には、返事は不要だ」
ノリスケ「我々は脅しにきたのではないのです!話をしにきたんですよ」
アナゴ「ノリスケさん、もういいよ。(波平に向かって)お前、番組を降りろ!力ずくでも降ろしてやる!」
イササカ「まあまあ皆さん落ち着いて。ちゃんとした理由がないと視聴者が黙っていないし、そうすると視聴率が下がって番組も打ち切りになってしまう。・・・波平さん、念のためにお聞きしますが、なぜ記念館を建てようというんですか?」
波平「番組の予算がカットされて、ギャラが出ないから、記念館を建てるのだ」
三郎「ギャラが出ないから1億円をみんなで配分するというなら分かるが、ギャラが出ないから記念館を建てるというのは理屈に合わないぞ!」
波平「はっはっはっ、理屈に合わないと言ったのう。これは面白い。理屈に合っていたらどうする?」
カツオ「それは聞いてから判断させてもらうよ」
波平「よかろう!では話合おうではないか!全員座れ!」

全員、座る。

波平「ところで君たちの意見というのは、今はみんなはギャラがでないから困っている。幸い、スペシャル番組で1億円の臨時収入が入った。それを配分しろ、と、こういうことだな」
甚六「そのとおりだよ!」
波平「なるほど。一応筋は通っている」
ウキエ「私達が頑張って獲得出来た1億円じゃないですか!だからギャラを渡せというのは当然です!」
中島「花沢さんなんか悲惨な生活ぶりなんです!お父さんの不動産屋がバブルの崩壊で、不良債権まみれで、番組のギャラで返済しているのが現状なんです!」
カツオ「だから、1ヶ月1万円生活を本当に実践しているんだぞ!」
花沢さんのお父さん「花子、すまん」(崩れ落ちる)
波平「みんなの言うことは、もっともだ」
ノリスケ「では、私達の言い分も認めてくれるんですね」
波平「・・・・・・・・」
マスオ「・・・返事をしてくれ、波平さん!」
アナゴ「どうした、なぜ返事をしない!」
波平「どうしようもないのだ」
カツオの担任「どうしようもないことはない!1億円の臨時収入を分ければたちどころに解決するではないですか!」
波平「君達は欲がないなあ。なんでそんなに1億1億というんだ!少し前ならわしだって年収1億ぐらいのギャラはもらっていた。それに当番組の関係者は総勢500人もいるのだ。頭割りすれば一人当たり20万円。20万円ぐらいなら、歌舞伎町のボッタクリバーに捕まれば一晩で使い切ってしまう額だ!あとに何が残る!」
アナゴ「ボッタクリバーはそんなに甘くないぞ!俺なんか未だにツケを払ってるんだ。早くギャラを分けろ!」
マスオ「だからあせっていたのか!」
波平「君達、そんなことだからいつまで経っても視聴率が回復しないんだ」
磯野藻屑源素太皆「なに!?」
波平「君達から見れば、みんな食えない厳しい時期に、記念館なんぞ頭でも狂ったのかと思うかもしれんが、こういうときにこそ広報活動に力を注がなくてはいけないのだ!」
カツオ「記念館で広報活動?僕達の知名度は全国に知れ渡っているじゃないか。今更記念館なんて。キャラクターをバンバン東芝以外の企業に使わせて、もっと契約金を取ってくればいいんだよ!」
波平「カツオ、お前も目先のことばかり言いよる。よく考えてみろ、なぜ視聴率が下がったのか。確かに昔のように日曜の夜は家族で食卓を囲むことが少なくなったとか、内容がマンネリだとか、原因はいろいろと考えられる。しかし、番組に、いつの時代にも変わることのない大いなる価値あれば、その根本を視聴者も、そして我々出演者も忘れることがないように記憶をとどめて置く場所、すなわち記念館があれば、根強いファンが育ち、絶対に視聴率が下がることはないのだ。わしのやり方は一見、遠回りで金もかかるように思うかもしれんが、番組の根本精神をしっかりと視聴者に知っていただくには一番の方法だ!皆も、これからの『サザエさん』のことをもっと真剣に考えてくれ」
裏のおじいさん「真剣に考えればこそ、じっとしてはいられないのじゃ。ギャラがでなければやる気もおこらない、やる気が起こらなければ、番組がしらけたムードになる。そう思えばこそこうして押しかけてきているのじゃ!」
ノリスケの妻タイコ「波平さん、確かにあなたの言うことには一理あります。でも、みんなの苦しみを理解できないような人とは一緒に仕事はできません!」
アナゴ「それに、いくら準主役でも、そんな勝手な行動を許せるか。1億円だぞ、1億円!」

全員で「そうだそうだ」と声をあげる

波平「あくまでも臨時収入の1億円を分けろと言うのか。しかし尋ねるが、君達の言うとおりにしたとして、先々まで生活していけるのか。ここはしっかりと考えてもらわなければ困るのだ!」
アナゴ「そんな講釈は聞き飽きた。問答無用だ!」
サザエ「そうよ、ボディーよ、ボディー」(マスオを殴る)
マスオ「勘弁カツオ~」
波平「よし、それならもう何も言うまい。しかし君達にひとつ見せたいものがある。それを見た上で、・・・いやいや決して手間は取らせぬ。それを見た上でいかようにも気の済むようにすればよい。」

タマが掛け軸を持ってくる

カツオ「どうせ『常在戦場』だろ、見飽きたよ」
中島「いやいや、波平さんは青年塾の一期生だから『志』じゃないの?」
甚六「いや、『万事研修』だよ、多分」

タマが掛け軸を開く。そこには「東芝劇場」の文字。

波平、うやうやしく一礼する。

波平「みんな、この言葉を忘れたわけではあるまい。『東芝劇場』。この言葉は、番組に出演したことのある者ならば、必ず目にし、口にしたものだ。申すまでもなく、これは『サザエさん』の作者、今は亡き長谷川町子先生が、フジテレビと東芝より、家庭の団欒に一服の清涼感をもたらす番組を作りたい、ぜひ『サザエさん』を使わせてくれと、そう懇願されて以来、皆々の心の絆となった言葉だ。この言葉がテレビに映る日曜日、家族はテレビを囲むように集まった。つまり、家族の絆の役目さえ担っていたのだ。そのことに我々は誇りを感じ、番組制作に汗を流してきたのではないか!なにがギャラだ!何が食えぬだ!番組が始まった当初も、視聴率は上がらず、食えぬ日々が続いたが、それでもわしたちにはプライドがあったじゃないか!この『東芝劇場』に出演しているというプライドが。なのに番組が売れ出しギャラが上がり始めると、視聴者の皆様に安らぎのある番組をお送りしているという喜びよりも、手にする金のほうを大事にする。この番組の根本精神を忘れたのか!わしは視聴者の皆さんに『東芝劇場』の主旨は何だったのか、長谷川先生の志は何だったのかを知ってもらいたいが為、ひいては出演しているわしたちの最初の志が何だったのかを、自らが思い出すための場所が必要だと感じたのだ!だから記念館を建てるのだ。」

全員うつむく。

波平「しかし、わしの考えが間違っているかもしれぬ。さぁみんなどうじゃ。もし間違っているのなら、わしは、頭を丸めて、番組を降りるつもりじゃ」

波平、マスオの眼鏡を拾い上げる。

波平「ほう、ここにも『東芝劇場』がある。これは、番組が始まったときに、長谷川先生からマスオ君に送られた、メガネの三城・チタンフレーム・QE6番ではないか。わしも同じものを持っておる。わしはいつも、番組について迷ったとき、長谷川先生から送られたこのメガネの澄み切ったフレームに向かって問いかける。どうだね、ひとつマスオ君も、この眼鏡に、いや、この『東芝劇場』に問いかけてみては?」

全員静まり返っている。

マスオ、波平から眼鏡を奪い、いきなり外へ出て行こうとするが、皆に制止される。

サザエ「マスオさん、どこへ行くの?」
マスオ「ええい!うるさい、ほっといてくれ!」
ノリスケ「マスオさん、どうしたんだ!どうしようというのだ?」
     
マスオ、こぶしで涙をふく。
      
波平「いや、強いことを言ってすまなかった。スタッフや出演者がどんなに苦しい思いをしているか、わしは知らぬわけではない。こと、花沢さんの話を聞くたびに悲しい思いがする。しかし、対処療法では、いつになっても番組を建て直すことはできないのだ。そりゃみんな辛いだろう。苦しいだろう。しかし辛抱してくれ。我慢してくれ。頼む、波平一生のお願いだ。どうか辛抱してくれ。もう一度あの誇り高き『東芝劇場』の志を思い出すためには、どうしても記念館が必要なのだ。家庭での楽しい一時をもたらす為にも、記念館を築き、あの楽しい日曜の夜6時半を取り戻さなければ、日本のアニメ界の夜明けは来ないぞ!」

全員すすり泣く。

アナゴ「波平さん、完全に目が覚めました。ただただ自分が恥ずかしい限りです。(マスオさんに向かい) なぁフグタ君、君もそうだろ?

マスオ、黙ってうなずく

アナゴ「他の皆も異存ないなぁ!」

一同、黙ってうなずく。

マスオ「波平さん、いえ、お父さん、本当に申し訳ありませんでした」
カツオ「夜中に大勢で押しかけて、本当にすみませんでした」
波平「いやよく分かってくれた。みんなにも家族がいるのに、本当によく我慢してくれた。それでこそ『サザエさん』の一員だ。波平、波平(ことばにつまる)・・・・・感激いたした。涙が止まりませんわ」

全員、「波平さん」「波平さん」と口々に波平に声をかける

波平さんの髪の毛がぬける・・・・
波平さんびびる。

波平「勘弁カツオ~!」

みんなが駆け寄ってくる。

波平「いやいやなんでもない」
ふね「夜中に無理をされたから、お体におさわりになったのでしょう」

タマが鳴く「にゃおー、にゃおー」

波平「ほう夜が明けたとみえる。ふね、雨戸を開けてくれ」
ふね「はいはい」
波平「今日は、ハイキング日和だなあ!」
一同、肩を組み、笑い合いながら、空を見上げる。
 
サザエさんのエンディングテーマが流れる「♪大きな空をながめたら、白い雲が飛んでいた。今日は楽しい今日は楽しいハイキング・・・


■劇中の言葉について

【勘弁カツオ】
「勘弁してよ」の意味で一部の人に使われる言葉。だが、使う人は非常にマイノリティである。青年塾関西クラスでは佳世姉さん以外使う人はいない。ちなみにGoogleで検索した結果、勘弁カツオ:13件、勘弁かつお:4件、かんべんカツオ:1件、かんべんかつお:4件であった。佳世姉さん以外に使う人がいるというのは、少なからず驚きであったが、しかし、確かに使う人は存在したのである。そこでこの劇では「勘弁カツオ」をギャグとして使う。

【やるならボディーよ。ボディーにしな】
3年B組金八先生で不良役の三原順子が使った言葉。顔面を殴ると、殴った跡が目立ち、すぐに先生に見つかるので、ボディー(=腹)を殴れ、と他の不良生徒に命令した。とんねるずもギャグに使用。

■主な登場人物の設定

【波平】
東芝が独占スポンサーを降板して以来、番組の視聴率アップ等に努めてきた。出演者・スタッフからの人望も厚い人格者。青年塾1期生でもある。

【サザエ】
本来明るい性格だが、マスオが会社と青年塾で留守がちなため、育児ノイローゼ寸前である。3年B組金八先生三原順子に影響を受けている様子。

【マスオ】
波平を尊敬しているが、記念館騒動で他の人間に影響を受け、波平に反感を抱いていく。青年塾8期生でもある。

【ふね】
和服の中に熱い情熱を秘めた美熟女。

【ノリスケ】
事実を客観的に伝えるふりをしながら、実はみんなを煽っている張本人。

【アナゴ】
脇役の劣等感があり、実は主役級の人間を妬んでいる。歌舞伎町のボッタクリバーではめられ、まだそのツケを払っているという噂。

【カツオ】
頭の回転が速く、機転が利く。

【中島】
カツオの友達で、カツオ同様頭が良い。カツオの性格を見抜いている。

【タラオ】
子どもだからとギャラを値切られていることに非常に怒りを感じている

【イクラ】
タラオと同様子どもゆえに損をしている。劇中では「ハイ~」の一言しか発しないが、その言葉の中には、ギャラを値切られた強い不満と憤りが込められている。

【イササカ先生の家の犬のハチ】
動物ゆえにギャラが低いと不満に思っているが、しかし動物は意外とギャラが高く、実はタラオ・イクラより高い。

【花沢さん】
不動産バブルの崩壊で、実は極貧生活。しかしそれを隠して明るく振舞っている。

【イササカ】
年の功のためか、冷静沈着。波平同様、人望厚い人格者である。

【海平】
波平の兄。頭頂部の毛が、波平1本に対して、海平は2本ある。しかし、波平同様ハゲであることは間違いなく、ハゲの話題には確実に絡んでくる。

【タマ】
番組では磯野家のペットであるが、普段は波平・ふねと同居。人語を理解し、日の出の時刻になると「にゃおー、にゃおー」と鳴く。