自らブランド価値を下げる高槻市1(今城塚)

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本日は、私の所属する総務消防委員会が開かれました。条例の改正案や、関大新キャンパスの経済波及効果の検討、高槻ブランド戦略、コンビに収納ソフト開発などについて質問しました。委員会で質問するのは初めてで緊張しました。質問も一部グダグダになってしまい、ちょっと恥ずかしかったです(笑)。他の委員の方の質問は、大変勉強になりました。

今回上げられた条例案・予算案について、別段反対するものもなかったのですが、要望や確認のために質問をさせていただきました。

特に今回質問した中で、一番気になったのが、「高槻ブランド戦略」です。150万円の予算案が上げられているのですが、私はこれは少ないと感じました。

この予算案の説明にはこうあります。

中核市高槻の更なるイメージアップを図り、市民満足度の向上を目指す。そのため、高槻シーズ(地域資源)の掘り起こし及び、創出を行い、その魅力の育成や発信等について戦略的な検討を行う。



ブランドに関しては、こちらのサイトにはこのように書かれています。

ブランドとは何か?(入門編) - [よくわかるマーケティング]All About

● 結局、ブランドって何?

ブランドとは個々のアタマに拡がる「○○らしさ」です。

ブランドは、顧客・従業員・株主などに誇りや夢を与え、企業にも継続的な収益をもたらしてくれる価格を超えた“価値そのもの”なのです。



中核市高槻の更なるイメージアップ」・・・更なるイメージアップと書かれていますが、実際、現在の高槻のイメージはどうでしょうか?「高槻らしさ」を考えたら・・・決して良いイメージを抱かれているとは思えません。現在の高槻市に対して、市民は、あるいは市外の方々は、どのようなイメージをもっているのか。それを調査して、客観的なデータを集めるとしたら、150万円よりももっとお金が必要でしょう。

ブランドイメージの向上は、高槻市に計り知れない恩恵をもたらすと思います。「高槻は良い街だ」と皆さんが考えてくだされば、多くの方々が集まってくださるでしょうし、そうなれば街も潤い税収も上がるはずです。

悪いイメージを払拭し、良いイメージを持ってもらうためにはどうすればいいのか。その方策を立てることは、高槻市にとっては最優先の課題の一つではないかと思います。

この「高槻ブランド戦略」について、担当課の職員の方と打ち合わせをしたときに、高槻にあるシーズ(種・地域資源)を掘り起こすのだと、それの一つは今城塚ではないか、ということを話されました。

けれども私は、高槻市の今城塚の整備のやり方には非常に不満を覚えています。

今城塚は、真の継体天皇陵であるといわれてます。通常、天皇陵であれば、発掘はおろか、一般人は足を踏み入れることもできないのですが、今城塚の場合、宮内庁が別の古墳を継体天皇陵としているため、発掘が可能なのです。日本で唯一、発掘が可能な天皇陵、というわけです。

現在、一通りの発掘調査を終え、「平成17年度からは文化庁の最大の整備メニューである『ふるさと文化の体験広場』事業の採択を受け、平成23年度春の公開を目指して、順次、年度を追った整備を進めている」のですが、この整備のやり方が、私から言わせると全然なっていないのです。

今取り掛かっている工事は、今城塚の内堀と外堀の間の「中堤内堤(「中堤」ではなく、正確には「内堤」でした。間違えていたので訂正します)」と呼ばれる部分の修復なのですが、これの完成形がビシッとし過ぎている。今日の委員会の質問では、ピラミッドの例を出して、凡そ以下のように述べました。
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4つの柱に基づいてシーズを掘り起こすということですけれども、ブランドというのは、シャネルにしてもルイヴィトンにしても、長年「本物」を作り続けてきた、そういう伝統が信頼されて、ブランドの価値を高めているわけです。もちろん、ブランドをこれから育てていくというやり方も否定はしませんが、シーズ・種を掘り起こしていくと言った場合、果たして高槻に、全国的に認められるような「本物」があるか、伝統や歴史があるか、と言うと、非常に限られてくると思います。

その一つが今城塚ではないかと、事前の打ち合わせでお話しされていましたけれども、今城塚をブランド的に打ち出すために、整備の名の下に、無理やりに工事したりすると、むしろその観光的な価値を失って、逆に、ブランド的なものを、回復不可能なまでに傷つけてしまう恐れがあると思います。

例えばエジプトのピラミッドを考えてみてください。あのピラミッドも、長い歴史の流れの中で、積み石の角がところどころ欠けている、あるいは中には、崩れかけているピラミッドのもあります。そんなふうに、ピラミッドが崩れかけているからといって、じゃあそれを撤去して、新たに石を真っ四角に切り出して、ピシッと石を積み上げて、新品のピラミッドを作り上げたらどうなるか・・・そんなピラミッド、誰が見に来ますか?観光客なんか集まるわけがありません。現在、今城塚では、中堤の部分が一部、100メートルほど欠けてると、だから新しい土を盛って、それこそビシッと、真新しい堤を造ろうと工事をしています。しかもその真新しい堤の上に、新品のハニワを並べるそうですけれども、そんなことをやってしまったら、先ほど申し上げた新品のピラミッドの例のような「愚」を犯してしまうことになると思います。歴史のあるものに手を加え過ぎてしまうと、むしろ偽物っぽくなってしまう。シャネルもルイヴィトンも、偽物であれば、価値はゼロです。せっかく本物があるのに、それを整備の名の下に工事をして、わざわざ偽物っぽくしてしまったら、高槻市は、全国の笑い者になってしまいます。ぜひ限られたシーズ・資産を大切にして、高槻ブランドを全国に発信できるよう、優れた戦略を立てていただきたいと要望します。



これは4月末に奈良県の明日香村に行ったときの体験に基づいているのですが、万葉文化館などの「造られ過ぎた」施設には、何の魅力もありませんでした。確かにそこは歴史の知識を得るためにはいい場所かもしれません。しかし、歴史のロマンというのは、やはり現地で、古びた部分や、崩れかけた箇所に、流れた時の長さを思ったり、あるいは失われた部分に「ここには、かつて、○○があって、△△という出来事があったんだなあ」と推理・想像をめぐらせて感慨にふけったり、そういうことができないと、感じられません。

高槻市は、今城塚の堤の部分に、どこかから土をもってきて、それを被せるような形で新しい「中堤内堤」を造ろうとしています。現地で担当課の職員の方から説明を受けた際、「1分の1スケールの模型にする」というような言葉が発せられましたが、そんなプラモデルみたいなものを目当てに、果たして、歴史に興味をもった観光客が来るでしょうか?経年劣化しながらも現存する本物の上に、現代の技術・工法・機材で「偽物」を新築したら、これは本当に取り返しがつかないことになってしまうと思います。

高槻市はすでに、住民との約束を破って今城塚の桜並木を伐採したり、堀の水中の生態系を壊したり、環境について取り返しのつかないことをやってしまっています。もっと今城塚の環境に配慮して、最低限の発掘調査と安全対策だけにとどめておけば、「環境・生態系に配慮した高槻市行政」として、高槻市・今城塚の双方のブランド価値は非常に高まったと思いますが・・・もうこれ以上馬鹿なことはやめていただきたいです。

100メートルほど欠けてる中堤内堤の部分ですが、先日視察に行きましたら、そこに大きな筒型のコンクリートの工作物が置いてありました。ここに盛り土をした場合、このコンクリートの筒がトンネルになり、車椅子の方もこのトンネルを通って古墳を見ることができるバリアフリーなんだとの説明でしたが、そこに盛り土をしなければ、そのまんまバリアフリーなわけです(笑)。

近隣の方から騒音・粉塵・家屋の被害の苦情があり、今城塚の工事は一時ストップしていたのですが、この中堤内堤の工事をするとなると、3mの高さにするということですから、かなりの量の土砂が必要になります。そうすれば、騒音・粉塵が出るということで、近隣住民とのトラブルは避けられないでしょう。そのトラブルが全国的にクローズアップされることになったら、あるいは「今城塚整備反対!」なんて横断幕を掲げられたら、ますますブランド価値は下がります。ここに無理に中堤内堤を造らないことが、一石二鳥の解決策です。

今城塚については、ブランドという点以外にも、真の天皇陵ということで考慮しなければならない部分もありますが、高槻市は少なくとも、これ以上自らブランド価値を下げないように、中堤内堤の工事は中止すべきです。