高槻市営バスの「幽霊運転手」

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さて、本日朝日放送の「ムーブ!」で報じられたとおり、高槻市営バスにおける「幽霊運転手」「代走」という違法行為を確認しました。

(VTR)
大阪市・・・「お迎えバス」の怪。京都市・・・「幽霊バス」「長距離回送バス」の怪。公営交通に巣食う魑魅魍魎。その正体を追及してきた我々に、新たな情報が。
高槻市バスにも魔物が住んでいる。ムーブ!取材班が入手した内部文書「点呼記録表」。そこに見えてきた魔物・・・それは、「幽霊運転手」。
点呼記録表に記されたある運転手の名前。しかしこの人物は、高槻に、いや日本にもいるはずがない運転手だった。衝撃の内部告発!幽霊運転手の正体とは?そこに潜む怪しい企みとは?またもや噴出した公営交通の深い「闇」。高槻市バスがひた隠す、ヤミ勤務の実態が見えてきた・・・

(スタジオ)
今回は、高槻市バスの「幽霊運転手」の話です。大阪府下で公営バスを運行するのは大阪市高槻市の2市のみ。高槻市バスは輸送人員1日約5万7000人。市民にとっては大事な足となっています。高槻市バスの2005年の決算は3000万円の黒字。しかし、一般会計から9億円の補助金が出ている。つまり税金がつぎ込まれているわけです。
その高槻市バスで持ち上がった疑惑が「幽霊運転手」。その日、高槻にいなかった運転手が、運転したことになっている。一体誰が運転していたのか。幽霊運転手には給料も支払われていました。ムーブ!のスクープです。

(VTR)
高槻市バスの「点呼記録表」。市民の命を運ぶ運転手達の健康状態や酒気帯びチェックが細かく記されている。1年間の保存が義務付けられている、れっきとした公文書だ。

疑惑・・・居るはずのない運転手。

平成18年6月の点呼記録表。ムーブ!取材班は、7日、8日、9日に注目した。運転手A氏の名前がある。A氏は、高槻市交通部労働組合の幹部。3日間、ちゃんと所定のバスを運転したと記されている。しかし・・・

高槻市交通労働組合が、組合員向けに発行した機関紙。そこに、A運転手が書いた報告書が載っている。

「第8次訪中団として、6月7日(木)~10日(土)の4日間、常州市を訪問した。」

中華人民共和国江蘇省常州市。点呼記録表ではバスを運転していたはずの、ちょうどその日、A運転手は、連合高槻の訪中団に加わって、遠く中国の地にいたのだ。
大阪・高槻市と中国・常州市・・・1500kmの彼方、2つの場所に、同時に存在する1人の人物。そこには、どんなカラクリがあるのか?本人を直撃した。

停車中のA運転手のバスに乗り込むスタッフ。「これ、組合役員ダイヤですか?」
A運転手「ちょっと、困りますね、ちょっと仕事中なんで。もう。ノーコメントにしといてください。もう。」
スタッフ「あきませんか?」
A運転手(スタッフを遮るように手を振る)「ちょっと、仕事中なんで。もう。」
スタッフ「昨年の6月、中国に・・・」
A運転手「もういいから、あきません。ここじゃ困ります。やめてください。そんなこと、やめてください。」
バスのドアを閉めるA運転手。

高槻の点呼記録と中国訪問の報告・・・いったい、どちらがウソなのか?

(スタジオ)
宮崎哲弥「この人はどこに居たんでしょう?ドッペルゲンガー(同じ人間が2人同時にいるという怪奇現象)というのがありますけどね(笑)。そんなことはありえない。」
関根アナ「どっちかがウソと。」
堀江アナ「どっちかが間違いなんでしょうかね。」
上田アナ「どちらかが間違いなんでしょうか?いやそうじゃなくて、どちらもありえるような話なんです。」

路線バスの運転手については、旅客自動車運送事業運輸規則によって「運行管理者は、乗務する運転手の点呼を行い、その記録を1年残す」と定められている。「乗務する運転手」というのは、当たり前だが、実際に運転した運転手のことで、その名前が記録に残るというわけだ。高槻市バスでは、点呼の際に、酒気帯び検知器に免許証を差し込むことになっており、運行管理者が、運転手の名前を取り違えるということはありえない。
では、どうして中国に居ながら高槻市バスを運転するという「幽霊」のような運転手が出るのか。
今回ムーブ!では、「勤務割出表」という内部資料を入手した。この中にその謎が隠されていた。

(VTR)
高槻市バスには「幽霊運転手」が頻繁に出現する・・・その事実を裏付ける内部資料を、取材班が入手した。
運転手達が、毎日、自分達の勤務内容を確認する台帳「勤務割出表」。ここに無造作に書かれた手書きの文字・・・「代走」。

内部告発者の現役運転手B氏がインタビューに答える。
スタッフ「『代走』という仕事をされたことはありますか?」
B氏「あります。」
スタッフ「『代走』は誰から頼まれるんですか?」
B氏「組合のほうから・・・」
スタッフ「労働組合から?」
B氏「はい。」

高槻市バスの現役運転手B氏は、「代走」とは、組合幹部が組合行事で運転業務を休むときに、非公式に、つまりこっそりと、代わりの運転手にバスを走らせることだと説明する。「代走」は、組合幹部から直接頼まれる。

スタッフ「『代走』はもちろんお金がもらえる仕事なんですね?」
B氏「はい、もらえます。」
スタッフ「どのくらいもらえるんですか?」
B氏「1万円ですね。」
スタッフ「それは1日走って?」
B氏「1日走ってです。」
スタッフ「やってらっしゃる運転手さんとして、どういう感覚ですか?」
B氏「アルバイト感覚ですよね。臨時収入としてお金をもらえるから・・・月収とは別のお金としてもらえますからね。」

「代走」を引き受けた運転手は、労働組合から代走手当てを受け取る。一方、「代走」してもらった組合幹部は、仕事をしていないにもかかわらず、高槻市から正規の給料を受け取る。毎年9億円もの血税を補填してもらっている組織の中で、働いていない職員が、のうのうと給料を騙し取っていたのだ。

市バスに乗り込み組合幹部C氏を直撃するスタッフ。「『代走』というものを頼まれたことってありますよね?」
組合幹部C氏「ええっとねえ、その話については、ちょっと当局を通して、話を聞いていただけます?」

勤務割出表で、代走の依頼を確認できた労働組合の幹部は4人。誰も、我々の取材に答えてくれなかった。

市バスに乗り込み組合幹部D氏を直撃するスタッフ。「『代走』は規則違反では?」
組合幹部D氏「ええっと、そのへんはちょっと、会社というか、当局に聞いてもらえますか?」

労働組合の決算報告書。昨年1年間で「代走」は、のべ80回以上行われたとみられる。常習的な詐欺とも言えるこの行為を、当局は、どこまで知っているのか?

再び内部告発者の現役運転手B氏。
スタッフ「点呼をとる時におかしいという話になると思うんですけど、そうはならないんですか?」
内部告発者B氏「ならないです。」
スタッフ「ということは、当局も『代走』を把握している?」
B氏「たぶん把握していると思います。点呼の時に、『代走誰々』という格好で点呼しますので。」
スタッフ「違法行為であるという認識は、運転手さんとしては?」
B氏「合法とか違法とかいう問題ではなくて、私はアルバイトとして見ています。当局がやっているから正当なことだと思っています。」

(スタジオ)
堀江アナ「市の交通部当局と労組がズブズブということでは?」
勝谷誠彦「ズブズブでしょう。指摘しておくが、点呼記録表に虚偽の名前を書いているとすれば、運行管理者の印鑑も押してあるはずだから、有印公文書偽造・同行使という刑事犯ですね。」

「幽霊運転手」というのは、労働組合の幹部のことだった。
組合幹部が、勤務日に、組合活動をするときに、「代走」として別の運転手にバスの運転を依頼する。「代走」依頼を受けた運転手が実際に乗務を行い、労働組合から1万円程度の日当を受け取る。
高槻市は関与していないように見えるが、点呼記録表には「幽霊運転手」=労組幹部の名前が公式な記録として書かれており、もちろん、市からの給料も、さらには満額のボーナスも、労組幹部に支払われる。この労組幹部は、市から給料を受けながら、労働組合活動を行っていたわけだ。

宮崎哲弥「もし代走の運転手が事故を起こしたらどうなるのか?」
堀江アナ「組合の活動として海外に行ってもいいが、その時は、勤務を休んで、組合から手当をもらうのが普通ではないのか。それをしないということは、組合からも彼に日当が出ているのかもしれない。」

この行為に問題はないのか。近畿運輸局に話を聞いた。

(VTR)
スタッフ「この本人(労組幹部)が頼んで、で・・・」
国土交通省近畿運輸局・黒田唯雄自動車監査官「あ、この方が実際に乗っておられるん?」
スタッフ「そのようなんです。」
黒田監査官「はあ~・・・点呼対象者が違うということであれば、当然その時点で点呼記録を直しておかなければいけないですからね。先ほど言われましたように、別の方が代走を行うというのであれば、その方に対して点呼を行うべきであって、元の人(組合役員)に、実際は点呼をしていないのに、そういう記載になっているということであれば、『記録義務違反』というものがありますから、その違反になる可能性が高いですね。」
黒田監査官「調査をさせていただいて、それについて法令違反があると認められれば、『行政指導』をしていくということになると思いますね。」

(スタジオ)
行政指導は免れない問題行為であるということだが、さらに、点呼記録表は保存義務がある公文書であり、ある弁護士によると、虚偽公文書作成罪に問われる可能性があるとのことである。また、勤務していない運転手が給料を受け取っていたことについては、詐欺の要件が成立する可能性がある。
市が勤務指示を出しているのは「幽霊運転手」=労組幹部であるが、労働組合は、代走の運転手に日当を払って運転を指示している。もし代走の運転手が事故を起こした場合は、誰の責任になるのか?市なのか労働組合なのか?
代走経験のある運転手は「代走中に事故を起こしたら、運転日報の運転手名を代走者に書き換えられ、責任を負わされたケースがあった。」と語る。

宮崎哲弥「公文書の改ざんですよ。」
勝谷誠彦「偽の文書で事故の保険金を受け取っていたとしたら、詐欺が成立する可能性もある。」
山本譲司ヤミ専従だ。職員の職務専念義務違反だ。正当な労使交渉であれば、勤務時間中でも許されるが。免除申請や管理が非常にいい加減なのではないか。」
宮崎哲弥「中国に行くのは正当な労使交渉とは違うでしょう。」
関根アナ「代走の運転手は、正規の勤務と代走の勤務を行っているので、長時間労働の可能性がありますから、安全面で不安ですね。」

今回の件について、高槻市交通部にインタビューを申し込んだが、今日9月10日(月)は、議会のため、インタビューをお受けできないとの回答であった。
実は、ムーブ!では、他にも高槻市バスの問題をつかんでいる。

(VTR)
高槻市バス問題・第2弾!(予告)
京都市「幽霊バス」と同じ穴の狢(むじな)
今なお続く、組合役員の優遇ダイヤ
その実態は、明日の放送で!

勝谷誠彦「市バスは大阪府下では大阪市高槻市だけ。本当に市バスは必要なのか。逆に、こういう奴らのために、赤字でもバスを運行しているのではないのか。」



私は8月17日、「市営バスの全運転手がいつどの路線のバスを運転したかが分かる文書」という名目で情報公開請求しました。

すると、8月31日に開示されたのが、「点呼記録表」と、運転手個々の運行ダイヤの書かれた「仕業票」でありました。このうちの「点呼記録表」が番組で放送されたものです。

「点呼記録表」ですから、点呼の記録が書かれているわけです。「点呼記録表」には、出勤・退勤、バスの出庫・入庫のほか、健康状態や飲酒、服装・携帯品などもチェックされています。その記録をつけられる現場には、点呼する管理者と共に、当然、点呼される運転手もいたわけです。

ところが、その「点呼記録表」に名前が記され、点呼で確認されているはずの職員が、実はその日、絶対に勤務できない状況にあったことが分かったのです。じゃあ、誰が運転していたのか?・・・幽霊か?・・・ということで、「幽霊運転手」というタイトルになったわけです。

実際は、幽霊が運転しているはずがなく、非番の職員が代わりにバスを走らせていたのです。何故そんなことをしたのか・・・それは、労組の幹部らが、職場を離れて組合活動をしつつ、満額の給与とボーナスを得るためです。

本来その日は自分がバスを運転しなければならないのに、労働組合の活動をするために、非番の職員に組合費からアルバイト代を出して、自分の代わりにバスを運転させ、自分は組合活動。場合によっては中国へ3泊4日で行ったり、あるいはゴルフをしたり、という実態があったのです。

そのために、「点呼記録表」という公文書を偽造していたわけです。これはれっきとした犯罪です。

「幽霊運転手」であった期間の給料はどうなっていたか。実はその間の給料も組合幹部に満額が支払われていたのです。働いていないのに、働いたように公文書を偽造して、市バス管理者は給料を払い、そして組合幹部は受け取っていた。これは番組中でも指摘されていましたが、詐欺です。

使用者と労働者のどちらがより罪が重いか。番組では組合幹部の行為にスポットが当たっていましたが、公文書を偽造し、公金を支出しているのは管理者側ですから、私は、使用者の方が責任が重いと考えます。

また、「旅客自動車運送事業運輸規則」にも明らかに違反しています。番組中でも紹介された弁護士さんのご指摘によると、以下の条文に違反している疑いがあるとのこと。

(過労防止等)
第二十一条  旅客自動車運送事業者は、過労の防止を十分考慮して、国土交通大臣が告示で定める基準に従つて、事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間を定めなければならない。

(点呼等)
第二十四条  旅客自動車運送事業者は、乗務しようとする運転者に対して対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により点呼を行い、次の各号に掲げる事項について報告を求め、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。

一  道路運送車両法 (昭和二十六年法律第百八十五号)第四十七条の二第一項 及び第二項 の規定による日常点検の実施又はその確認

二  疾病、疲労、飲酒その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無

2  旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を終了した運転者に対して対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により点呼を行い、当該の事業用自動車、道路及び運行状況について報告を求めなければならない。この場合において、当該運転者が他の運転者と交替した場合にあつては、当該運転者が交替した運転者に対して行つた第五十条第一項第八号の規定による通告についても報告を求めなければならない。

3  旅客自動車運送事業者は、前二項の規定により点呼を行い、報告を求め、指示をしたときは、運転者ごとに点呼を行つた旨、報告及び指示の内容並びに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。

一  点呼を行つた者及び点呼を受けた運転者の氏名

二  点呼を受けた運転者が乗務する事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示

三  点呼の日時

四  点呼の方法

五  その他必要な事項


(乗務記録)
第二十五条  一般乗合旅客自動車運送事業者、一般貸切旅客自動車運送事業者及び特定旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の運転者が乗務したときは、次に掲げる事項を運転者ごとに記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。

一  運転者名

二  乗務した事業用自動車の自動車登録番号等当該自動車を識別できる記号、番号その他の表示

三  乗務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び乗務した距離

四  運転を交替した場合は、その地点及び日時

五  休憩又は仮眠をした場合は、その地点及び日時

六  道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第七十二条第一項 に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則 (昭和二十六年運輸省令第百四号)第二条 に規定する事故(第二
十六条の二及び第三十七条第一項において「事故」という。)又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合にあつては、その概要及び原因

七  乗務した事業用自動車(乗車定員十一人以上のものに限る。)に車掌が乗務した場合は、その車掌名

八  前号の場合において、車掌がその業務を交替した場合は、交替した車掌ごとにその地点及び日時

★代走の際の点呼記録・乗務記録の虚偽記載ということは間違いないと思います。


事業用自動車内の掲示)
第四十二条 旅客自動車運送事業者は、事業用自動車内に、当該事業者の氏名又は名称、当該自動車の運転者その他の乗務員の氏名及び自動車登録番号を旅客に見やすいように掲示しなければならない。

★代走の際は、誰の名前を表示したのでしょうか。やはり、実際に走っている人なのですかね。


(運行管理者の業務)
第四十八条 旅客自動車運送事業の運行管理者は、次に掲げる業務を行わなければならない。
三 第二十一条第一項の規定により定められた勤務時間及び乗務時間の範囲内において乗務割を作成し、これに従い運転者を事業用自動車に乗務させること。



高槻市営バスがこれほどの犯罪行為をしているとは、調べてみるまで夢にも思いませんでした。私は、高槻市営バス管理者の告発を検討しています。


さらに、高槻市営バスには他にも問題があるのですが・・・それは、「ムーブ!」の放送の後に。明日の「ムーブ!」にも、是非ご注目下さい!