「無防備・平和都市条例」に、無防備ではいられない。~その1~

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先日知人から「こんなチラシがあるが・・・」と見せてもらったのが、写真の「高槻市無防備・平和都市条例を!」のチラシ。チラシの裏面に名を連ねるのは共産・社民に親しい方々。記されたURLを入れサイトを見ると辻元清美もこの運動に協力している、と。チラシには「この運動は、憲法9条を地域から実現していく運動です」ともあり、共産・社民系の人々が憲法9条を合言葉に党派を超えて協力し合っているよう。

チラシの主催団体「高槻市無防備地域宣言を実現する会」は具体的には何をしようとしているのか。有権者の50分の1(高槻市では約6000人)以上の署名を1ヶ月以内に集めれば、直接請求制度により地方公共団体の議会(高槻なら市議会)に条例案の審議をさせることができる。そうやって高槻市に「高槻市無防備平和都市条例」なる条例の制定をさせようというのだ。

どんな条例か。条例案の第1条(目的)には「(前略)戦争の危機が迫った時には、国内外にむけて『無防備地域宣言』を行う旨を明らかにし、もって自治体の責務である、市民の平和と安全を保障することを目的とする」とある。文中の「無防備地域宣言」とは、日本をはじめ先進国のほとんどが締約している「ジュネーブ条約追加第一議定書」に定められたもので、戦争状態になった場合、「当局」が、管轄地域を無防備にして「無防備地域宣言」をし、それを相手国に通告すれば、その地域への攻撃が禁止されるというもの。

だが、この条例、西宮市議の今村岳司氏の「無防備地域宣言運動への反論」には、

●条約中の防衛に責任を有する「当局」とは、日本においては国であり、地方自治体は条約に基づいて「無防備地域宣言」を行う権限を有しない。
ジュネーブ条約は過去に何度も破られている。
●テロ・反政府武装組織・カルト組織に対しては無効である。
●「無防備地域宣言」は、「当局又は住民により敵対行為が行われていないこと」が要件。しかし日本が侵略を受けた場合、パレスチナインティファーダのような住民による自発的なレジスタンスが起きる可能性があり、これを条例で防ぐことは非現実的。
地方自治法(第1条の2、第14条)、国民保護法 (正式名称: 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)(第3条)、自衛隊法、武力事態対処法に抵触する可能性がある。

と、この条例が仮に制定されても無意味であることの理由等が示されている。チラシに書かれている「『無防備地域宣言』を行った地域は、仮に戦争が起こってもその地域に対して攻撃が禁止され市民の生命・財産が守られる」というようなことは、この条例に基づいては起こりえない。

無防備地域宣言運動への反論
http://xdl.jp/hantaitouron/


ところで、すでに署名期間は10月1日からスタートしている。高槻市民の特性を考えると、こういった主旨のものに約6000人の署名などすぐに集まるだろう。現に「高槻市無防備地域宣言を実現する会」のブログを見ると、初日で署名421筆、2日目482筆、3日目543筆と、ぞくぞくと署名が集まり、3日間ですでに必要な署名数の約4分の1に達している。

高槻市以外の多くの地方自治体でも、この無意味な「無防備地域宣言運動」が広がっている。すでに大阪市枚方市、西宮市では、有効署名数以上の署名が集められ条例制定の直接請求がされた。しかし、すべて議会で否決されている。

だが、高槻市議会の構成を見ると、36議員のうち反対しそうなのは公明8・自民5・新政会4の17人で半数以下。民主党系の会派「市民連合」も左派が多く、もしかすると、日本で初めてこの馬鹿で無意味な条例が制定されるかもしれないのだ。そうなれば、「アホでマヌケな高槻市」と日本中から笑われるだろう。

インチキモンチキな『平和』は、勘弁カツオ~!」に書いたが、私は、中国・北朝鮮という危険な社会主義国家を隣国にもつ状況では、「無防備」イコール「平和」ではなく、むしろ「無防備」イコール「大虐殺」の可能性が高いと考えている。もし高槻でこの条約が制定され、「無防備地域宣言都市・高槻」などと世界に情報発信されれば、有事の際には敵国から「防御が弱そうだ」と、逆に高槻市は恰好の攻撃対象にされるのではないか。

しかし、この条例が無意味であることは、「無防備地域宣言運動」の主催団体も、議会で否決されるに至る議論等を通じてよく知っているはずである。無意味を承知で何故この署名運動を行うのか。もしかすると最近流行りの「国勢調査詐欺」のように、個人情報を得るためなのかも・・・主催団体の動機がよく分からない。

条例案は現行法に抵触し、仮に制定されても高槻市には「無防備地域宣言」を行う権限がなく、むしろ条例があることによって攻撃をうけやすくなるのであれば、これは詐欺である。名付けるなら「無防備詐欺」か。

募金詐欺」「ホワイトバンド詐欺」なんていうのもあるが、「平和」や「貧困の救済」などという甘い言葉には、無防備ではいられないご時世のようだ。