やはり不透明。審査基準もおかしすぎる!…高槻市の特養コンペ問題

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以前「天下りは高槻市にも!…不正に補助金を受給した社会福祉法人に、また補助金?の怪」という記事を書きました。特別養護老人ホームの建設に絡んで不正に補助金を受給し、元理事長が詐欺罪などで実刑判決を下された社会福祉法人を、何故か再び、高槻市役所が、新しい特別養護老人ホームの運営事業者に選定。その社会福祉法人には、高槻市役所で福祉部門の要職を務めた元市職員の天下りもあり、疑惑は深まるばかり。

市議会でまだ予算が通っていませんが、もし市議会で承認されれば、今までのケースから考えて、おそらく2億円以上の補助金が出ると思われます。

「これはあまりにもおかしい」と感じ、情報公開請求をしていましたが、その決定通知書が出ましたので、高槻市役所に行ってきました。

公開された公文書の件名は、(1)平成18年12月11日開催の保険福祉施設等施設整備審査会会議録、(2)各法人ごとの施設整備採点表、(3)施設整備採点表の3点。(2)は、一部非公開ということで、審査に通った上記の社会福祉法人の一部の情報以外はすべて黒塗りに。((1)の議事録は、肝心な部分が「・・・」と書かれて省略されており、何の役にも立たないものでした(笑)。この議事録、誰が出席したかすらも書かれていないのです。)

他の4者の情報が一切開示されないので、審査に通った社会福祉法人と比較のしようがまったくありません。

前にも述べましたが、審査会の委員はすべて市の職員。外部の人間は一人もいません。市職員の方によれば、市役所の内部でも「審査会に外部の人間を入れないのはおかしい」という批判があるそうです。これでは「密室」と言われても仕方が無いでしょう。

肝心な情報は開示されない。審査は密室。これでは、本当に公正・適正に審査がされたのか、誰も分からない、検証できないということになります。あまりにも不透明に過ぎます。

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公開しない理由は、「法人の評価(構造設備、資金、事業評価等)に関する情報であって、公開することにより、当該法人の権利、競走上の地位その他正当な利益を害すると認められる」からだとのこと。

けれども、この情報を公開したからといって、何の利益を害するというのでしょう。

社会福祉法人」とは、「社会福祉事業を行うことを目的として社会福祉法の規定により設立された法人で、公共性が極めて高く、営利を目的としない民間の法人」とされています。民間の株式会社であっても、上場企業等であれば、財務など重要な情報はすべて開示されます。公共性の高い社会福祉法人の資金や事業計画などが開示されないというのは理解できません。

また、社会福祉法人には、民間企業のような競争はほとんどないと考えます。特に今回の件は特別養護老人ホームです。身内や知人の方が特養に入居の申し込みをされたことのある方ならご存知かと思いますが、特養は常にほぼ満床であり、たくさんの入居希望者の方が順番待ちをしているような状態です。民間企業のような、熾烈な「お客様の獲得競争」というようなものはないわけです。

価格競争もほとんどありません。介護保険制度の中で、特養なども、一定の介護サービスをすれば、その分一定の介護報酬を得られるようになっています。サービスの内容についても、監督官庁が定期的に監査に入るので、一定の水準が担保されています。「サービスは悪いが、値段も安い」そんなところはないわけです。

福祉施設は好き勝手に建てられるわけではなく、国の方針に基づいて、許認可権をもっている地方自治体がその数を決めています。施設の乱立による過当競争など、そもそも起きようがないのです。

ですので、情報を開示しないというこの高槻市の決定は、まったく不当であると私は考えます。

さらにおかしな部分が。それは、施設整備採点表の一番最後の「法人の適格性」という審査項目です。この項目については、103点満点中、15点という大きな配点がされています。

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この「法人の適格性」という項目について、どのような基準で採点されるか。公開された資料によると「経営基盤、社会的信望等」とされています。

審査を通った社会福祉法人は、過去に大きな問題を起こしたことがあるにもかかわらず、15点満点が付けられていました。他の4法人は、それより低い点数しか付けられていませんでした。これはおかし過ぎます。

私は市職員の方に「この社会福祉法人が、過去に問題を起こしたことはご存知でしょう?」と訊きました。すると、それは知っているけれども、一定年数が経過しているから、との答えでした。じゃあ、その一定年数とは何年ですか、と問うても、答えられない。市役所が、適当に「一定年数」などと言っているだけです。

以前書いたとおり、この社会福祉法人は、新聞を大きくにぎわせたような詐欺事件を起こしました。確かにそれから約9年経っています。けれども、大阪府の出した業務改善命令によって役員全員が解任された数年後、また元の理事長一族が役員になっているのです。9年経っているとはいえ、これでは世間的に見れば「本当に反省してるのか」と疑われるところでしょう。

そのような社会福祉法人に、どうして「社会的信望等」を採点基準とする項目で、満点が付けられるのか。私は市職員の方に「他の4者も過去に何か問題を起こしたのですか?」と尋ねました。すると「ない」との回答でした。ならば、この社会福祉法人は、この項目については最低点を付けられても不思議ではないはずです。

総合点では、この社会福祉法人は80点。2位の法人は75点でした。ということは、この「法人の適格性」という項目の点数いかんによっては、順位の逆転もありえるわけです。

「社会的信望等」というなら、本当に「社会的」に信望があるのか、「地域社会」に訊いてみるのが手っ取り早いでしょう。市役所内部で、市役所の職員だけで構成されている「密室」の審査会で、勝手に訳の分からない基準で「社会的信望」など決めるのはいかがなものか。

もしまた問題が起きた場合に、「地域社会」の方々にも被害が及ぶかもしれません。100床という大きな特別養護老人ホームですから、高槻市の全市的な問題にもなるでしょう。本当に「地域社会」において、満点に近い「信望」を得られるのかどうか、私はアンケート調査をしてみたいと考えています。

福祉の分野において、こんなに不透明で、おかしな審査がされている高槻市役所。天下りのこともありますし、徹底的に内部の調査をする必要があるはずです。