【市の非常勤職員】860人の雇用問題

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「非常勤職員の雇用期間は、要綱で最長5年までと決められているのに、ある幹部職員の親族がそれ以上の期間働いている。他にも幹部職員の親族が非常勤職員として働いているケースがある」といった内部告発に基づいて、市議会議員に当選した直後に、非常勤職員について調べてきました。

当初、高槻市の非常勤職員の雇用については、次の2つの問題があると考えられました。

(1)就業要綱に反して5年超勤務している職員が存在する。

(2)非常勤職員の中には幹部職員の親族が複数いる。縁故採用の疑いがある。



そこで情報公開請求をして、今年4月30日時点で、どの部署にどんな職種の非常勤職員がいるのか、実質何年働いているのか、就業に関してはどのような規則になっているのかに関して資料を集めました。全部署及び外郭団体に請求をしたので、計1500枚くらいの大量の文書が出てきました。

それを、アルバイト様にも手伝ってもらって集計したところ、高槻市には現在860人の非常勤職員がおり(外郭団体を併せると968人)、その内、就業要綱に定められた以上の期間雇用されている方が全体の約1割に当たる90人もいることが分かりました。

集計結果はこちらです。

就業要綱で定められた5年を超えて雇用されているケースがあるにもかかわらず、起案文書に決裁の判子をついた幹部の方々。就業要綱に反した雇用であるにもかかわらず、どうして判子を押したのでしょうか?チェック体制にも問題があると考えられました。

幹部職員の親族が雇用されている点についてですが、内部告発のあった件については確認が取れました。その他の部署でもそういうことがあるようで、こういったことは、市役所内で公然の秘密のようになっているようです。

上記の件について、「この非常勤の方が公正に採用されたことを証する文書を出せ」と言っても、結局担当部署では出すことができなかったので、縁故採用の疑いが濃厚であると考えられます。

高槻市役所は、非常勤職員について、厳格に就業要綱を運用せず、公正な採用をすべきところを、一部縁故採用をしてきたのではないか。非常勤職員人事を、自分たちの都合のいいように利用し、食い物にしてきたのではないか。そのように考えられるわけです。

これらについては正さなければなりませんが、一方で、「公務員の非常勤職員」という職が、実は非常に不安定であることが分かりました。民間企業のパートさんであれば、1年の契約期間が来たからといって、簡単に「ハイ、今日までご苦労様。明日から来なくていいです」といういわゆる「雇い止め」はできませんが、「公務員の非常勤職員」の場合、それが簡単にできてしまうのです。

この調査の際、人事室の幹部に、なぜ就業要綱で雇用期間を最長5年としているのかを訊いてみました。すると・・・

・5年間という期間は、「期待権」をもたれないようにするため。
・正規職員なら一定期間で転属するが、非常勤職員はそれがない。特定の非常勤職員がずっと特定の部署に留まることによるマイナスを解消するために5年という期間を設けた。
・5年という期間を就業要綱に書いているのは、雇い止めのためである。
・非常勤の雇用は、民間であれば契約に基づく雇用であるが、行政の場合は「相手方の同意の必要な行政行為」である。
・非常勤職員は、「任期付公務員」ではない。非常勤職員は、地方公務員法の適用を受けない。



との答えでした。明確に「雇い止めのため」と言い放たれました。

調べてみると、この人事室の幹部の見解は、過去の判例に沿ったものでした。昨年東京地裁で、これまでの判例を覆すような判決が出ましたが、実はこれは「特段の事情」を認めたからであり、判断においては従来の判例を踏襲していました。

非常勤職員は、いつ雇い止めになるか分からず、非常に立場が弱い。判例には「非常勤職員を再度採用するかどうかは任命権者の自由裁量に属し」とあり、行政側に強い権限が認められています。

けれども、これでは、民間の労働者に比べると、あまりにも非常勤職員がかわいそうに思えます。

非常勤職員の数は、高槻市に限らず、多くの自治体で増えてきています。高槻市の正規職員は、奥本市長の選挙時のビラによると、平成18年で2512人とのこと。非常勤職員の方は、今年4月末時点で860人もいます。

地方自治体の行財政改革というのは、一面では、人件費を抑えるために、正規職員を削減する一方で、非常勤職員の雇用を増やしてきたわけです。高槻市役所も、国会の野党的に言うと「非正規雇用を促進してきた」「職員間の格差を促進してきた」ことになります。

非常勤職員は、これまで正規職員がやっていた仕事をしているわけで、恒常的に業務を担う存在になっているといえます。市役所や外郭団体で話を聞くと、非常勤職員の中には、正規職員よりもよく働くと評価されている方や、他の非常勤職員に対して指導的な役割を担っている方もおられました。

そんな非常勤職員の皆さんが、不安定な待遇のままでいいのでしょうか。高槻市は、非常勤職員の方を、いつでも「雇い止め」にできるような状況にしておくのでしょうか?これは、860人もの方の雇用問題なのです。

非常勤職員の数がどんどん増えてきているのに、就業要綱違反の状態のまま放置し、待遇も改善せず、就業要綱すら変更せずにきたということは、奥本市長はじめ高槻市は、非常勤職員の存在・雇用問題をあまりにも軽視してきたということではないでしょうか。

冒頭に書いた「幹部職員の親族の縁故採用」や口利きによる採用という実態があるならば、直ちにこれは改めなければなりませんが、恒常的に行政の業務を担うようになってきた非常勤職員の待遇については、「雇い止め」をできないようにし、少しくらいの昇給も実施して、民間並みに改善しなければならないのではないかと私は考えています。