【市バス】住民監査請求vs調査委員会

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今日の毎日・朝日・読売各紙で報じられたとおり、昨日の13時ごろ、高槻市監査委員会に対して、市バスの一連の不正事件に関する住民監査請求(高槻市職員措置請求)を行いました。

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内容は以下のとおりです。

高槻市職員措置請求書

第1.高槻市長奥本務氏に関する措置請求の要旨

1.請求の概要

 本年9月10日、11日、13日および18日に、朝日放送の報道・情報番組「ムーブ!」(以下「ムーブ!」という)で報じられた「幽霊運転手」「代走」(勤務実態のない労働組合幹部に対して給与・賞与を支払っていた件)および「労組幹部優遇ダイヤ」(労組幹部だけがバスの乗務時間が短かった件)、ならびに「有給職免」(法で認められていない労働組合活動に対して有給で職務専念義務が免除されていた件)における給与・賞与の支払いについては、不当利得であることは明白である。また、高槻市交通部は「代走」行為の発覚を免れるため、公文書である「点呼記録表」の改ざん等を行ったという事情があり、これは地方自治法242条第2項に規定の「正当な理由」に該当するので、不当利得の時効である10年前にさかのぼって、平成9年度から平成19年度分までを、関係者らに返還させるなど必要な措置を講ずるよう勧告することを求める。

2.不当利得の種類

(1)「幽霊運転手」「代走」という違法行為

 高槻市交通部は、同部に所属する乗務員らによって組成された高槻市交通労働組合(以下「労組」という)の幹部らに対し、同幹部らが組合活動のために予め割り当てられた時間に市バスを運転できない場合、別の職員が同幹部に代わって運転を行う、いわゆる「代走」を、長年にわたって黙認してきた。また、上記幹部が実際には勤務をしていない、いわゆる「幽霊運転手」であった期間に関しても、勤務したものと取り扱って同幹部に給与・賞与を支払い続けてきた。
 同部森塚理事は「ムーブ!」のインタビューにおいて、代走をやめた理由を訊かれた際に「今日的な社会状況ですね。過去はそれで通っていたが、今は代走が認められるべきではない」と答えた。しかし、勤務実体のない市職員を、虚偽の公文書を作成して勤務しているように取り扱い、公金から給与・賞与を与えるという行為は、過去においても当然に違法である。
 代走の回数について、高槻市は、平成18年度は103回であると公表している。

(2)違法な「有給職免」

 地方公務員については、地方公務員法第35条により職務に専念する義務(以下「職務専念義務」という)が課せられており、同法第55条の2第6項の規定に基づく条例が制定されている場合で、かつ同法第55条第8項の規定に基づき正当な交渉を行う場合でなければ、勤務時間中に組合活動を行うことが禁止されている。また国は、昭和41年6月21日付け自治公第48号行政局通知により、「地方公務員法第55条第8項の規定に基づき、正当な交渉を行う場合」以外に、給与を受けながら勤務時間中に組合活動をすること禁止するよう各自治体を指導していた。
 にもかかわらず、高槻市交通部は、労組所属の職員に対して、組合活動を理由として職務専念義務の免除を求められた場合に、違法にも、上記正当な交渉を行う場合以外の組合活動についてもこれを許可し、労組幹部らが上記正当な交渉を行う場合以外の組合活動についても、有給でこれを勤務時間中に実施することを認めていた。
 この違法な有給職免の日数は、延べ118日にも及ぶ。

(3)「労組幹部優遇ダイヤ」という不当な便宜供与による空き時間

 労組の執行委員長・執行副委員長・書記長・書記次長のいわゆる「四役」の労組幹部に対して、交通部は、他の乗務員よりもバスに乗務する時間が短い、いわゆる「労組幹部優遇ダイヤ」をあてがっていた。上記「労組幹部優遇ダイヤ」によって、勤務時間の後半に、バスの乗務を行わない約1時間半~2時間の空き時間が生じていた。
 上記空き時間について交通部は、業務上は「待機」であったと説明したが、労組幹部以外に待機要員の職員が複数存在していた。昼間の乗客の少ない時間帯に労働組合の幹部が4人も待機する必要性もなかった。なお、この待機中に労組幹部が出動したケースは一度もない。また、待機要員が必要だとしても、労組幹部に限定する必要はなかったはずである。労使の協議・交渉が必要だとしても、毎日のように行う必要もない。労使の協議・交渉のために上記空き時間が本当に必要ならば、問題が発覚した後も廃止する必要はなかったはずであるのに、上記「労組幹部優遇ダイヤ」は廃止された。よって「労組幹部優遇ダイヤ」による労組幹部に対する楽な仕事の割り当ては、交通部当局による、労組幹部に対する実質的な便宜供与・利益供与であったと考えられる。
 別添仕業表によれば、執行委員長(SA43)・執行副委員長(MA41)・書記長(SA42)・書記次長(SA41)の「労組幹部優遇ダイヤ」による空き時間はそれぞれ1時間49分、1時間55分、1時間39分、1時間29分である。労組四役が各々年間220日間勤務したとすると、上記空き時間の累計は約1511時間にも及び、1日8時間勤務とすると約189日分となる。
 また、労組の発行した別添「高槻市交通ニュース」2006年3月31日号の議案6号を見ると、平成18年4月3日より以前は、上記空き時間はさらに1時間ほど長かったと記されている。

3.不当利得の算定期間

 交通部は、別添新聞記事のとおり、請求人の情報公開請求後、違法である「代走」行為の発覚を免れるため「点呼記録表」を改ざんし、あるいは一部の違法な「有給職免」の発覚を免れるため、決裁から3ヶ月以上も経過しているにもかかわらず、これを有給休暇に偽装するため、決裁文書に虚偽の記載を行った。
 さらに、この問題が報道された後も、交通部トップ・山本管理者は、改ざんを指示していたにもかかわらず「まったくそんなことはやっていない。言い切ります!」と嘘をつき、また、奥本市長も、改ざんの重要性を問われた際に「改ざんと言うより、消したということは事実ですけど、書き換えたとか置き換えたとかというものではないわけです」と、公文書の改ざんが大したことではないように言ってごまかした。しかし、ついに高槻市は「情報公開制度に対する認識が甘かった」等と自ら非を認めるに至った。
 上記改ざんについては、請求人において、本年9月28日に、虚偽有印公文書作成容疑で刑事告発を行ったところであるが、違法な「代走」行為を、違法な「虚偽有印公文書作成」でもって発覚を免れんとした行為、さらには市の幹部が高槻市民や報道機関に対し、嘘やごまかしを行ったことは、極めて悪質というほかはなく、これは、地方自治法242条第2項の「正当な理由」に該当する。よって、不当利得の時効である10年前にさかのぼって、平成9年度から平成19年度分までを、関係者らに返還させるなど必要な措置を講ずるよう勧告することを求める。
 なお、交通部では、点呼記録表などの保存期間が1年間であり、それ以前のものは廃棄して不存在とのことであるが、本年10月2日に労組事務所に電話して書記の女性に確認したところ、帳簿類を5年度分保存しているとのことである。いつ、誰が「幽霊運転手」であったのかは、上記帳簿を労組から出させて詳細を把握すべきである。記録のない期間の不当利得については、記録のある期間の算定結果から推定すべきである。

4.不当利得の算定方法

 不当利得の算定については、「労組幹部優遇ダイヤ」によって労組幹部に 供与された約1時間半~2時間の時間分(平成18年4月3日より以前はこれより1時間長かったのでこれも算定上考慮すべきである)、違法な有給職免の日数分、および「代走」によって「幽霊運転手」状態であった日数分を差し引いて、もう一度給与・賞与を計算し直し、実際に支給された給与・賞与との差額を返還させるべきである。

5.不当利得を支払うべき関係者

 違法な「代走」「有給職免」および不当な「労組幹部優遇ダイヤ」の空き時間によって、労組幹部らが受け取った給与・賞与が不当利得であることは以上のとおり明白である。しかし、労組の幹部だけでこのような給与の詐取は不可能である。労組の幹部が実際は乗務していないことを知りながら、乗務したように虚偽の公文書を作成して、給与・賞与を支払ったのは、交通部当局である。交通部当局と労組の幹部は、いわば「共犯」なのである。公務員でありながら、労使の双方が共謀して、組織的に公金の横領を行っていたのである。これは高槻市民に対する詐欺的・背信的な行為である。
 よって、前項の算定方法によって算出された不当利得は、組合幹部だけが返還するのではなく、それに関わった職員全員が連帯して返還すべきである。
 また、不当利得返還請求権の時効は10年であり、他に法律の定めがなければ、10年分を返還すべきである。
 この10年間で、「代走」「有給職免」「労組幹部優遇ダイヤ」の違法・不当な行為に関わったのは、現役の市幹部・労組幹部だけではない。前の管理者、前の労組委員長をはじめとする、過去の関係者すべてについても、誰がこの組織的な公金の横領に関わったのか、しっかりと調査したうえで、連帯責任による不当利得の返還を求めるべきである。

(以下省略)



一方、高槻市も調査委員会を10月5日に立ち上げるとの知らせが、16時40分ごろ、議会事務局からFAXで入ってきました。

私が今日住民監査請求をしたので、慌てて発表したのかもしれません。

調査委の正式名称は「高槻市交通部事務処理調査委員会」。メンバーは次のとおりです。

大野眞義氏:弁護士、大阪大学名誉教授
郡 邦辰氏:司法書士
重谷芳人氏:公認会計士
中野久一氏:高槻市コミュニティ市民会議議長



さあ、両方とも、どこまで踏み込んだ判断をしてくれるか、ですね。

調査委の大野眞義氏は刑法がご専門だとのこと。不当利得の算定も重要ですが、「代走」等によって組織的な横領が長年にわたって行われてきたわけですから、その背景も含め、それらについての刑事的な側面での見解も示していただきたいところです。それが出たならば、奥本市長も該当する市職員や市職員OBを刑事告発すべきではないでしょうか。そうでないと、高槻市役所に自浄能力があるとは考えられません。